インド神話の基本を知る
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原人プルシャ神話…千の頭・目・足を持つ身体と世界の誕生
インド神話の基本を知る(3)人間と世界の始まり
鎌田東二(京都大学名誉教授)
インド神話では人間や世界の始まり、あるいは文化の始まりについて、どのように描かれているのだろうか。複数の伝説がある中で比較的よく知られているのは、千の頭、千の目、千の足を持つという原人プルシャという存在がいて、その身体から分かれ出て人間や世界が生まれたという神話である。また、人間の祖先のような位置づけとして描かれているものに、マヌとヤマ(閻魔)の物語がある。そこで今回は、それらについて解説しながら、インド神話の特徴を概観する。(全4話中3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分49秒
収録日:2022年6月7日
追加日:2023年10月1日
≪全文≫

●原人プルシャから人間や世界が生まれてきた


―― 今までの神話でも、世界の始まりなどの話を伺ってきましたが、インド神話の場合ではどういうことになるのですか。

鎌田 インド神話は断片的にいろいろな世界の始まりが語られているので、そのいくつかのパターンといいましょうか、断片をお話ししますと、多くの人が知っているのは、原人(巨人)プルシャの身体から分かれ出て、人間や世界が生まれてきたという神話です。これはもともと『リグ・ヴェーダ』の中にあるものです。

 千の頭、千の目、千の足をもつ原人プルシャという存在がいて、そこから万物や人間が分かれ出てくる。例えば目から太陽が、心臓から月が、口から軍神インドラや火の神アグニが生まれてくる。呼吸から風の神ヴァーユが生まれてくる。臍から空の世界、頭から天の世界、足から大地の世界、それから耳から四方八方の方位が生まれてくる。

 また人間の場合は、人間の階級・階層(「ヴァルナ」と呼ばれる)として、口からバラモン、腕からクシャトリヤ(釈迦はクシャトリヤの階級で、大名のような存在)、腿からヴァイシャ(平民、市民のような存在)、足からシュードラ(奴隷)。このような4つのヴァルナが、原人から生まれてくる。バラモンが一番高位にあるので、バラモンの体系が正当化されるような語りが、原人プルシャ神話として語られています。

 あるいは、水から卵が生まれ、その卵から創造神プラジャーパティが生まれ、そこから天、空、地の3つの世界ができてきた。このような神話が、断片的に『リグ・ヴェーダ』の中で述べられています。

 そして、そこには多神教的な世界が開陳されているので、たくさんの神々がいます。悪魔もいます。

 日本で知られているのは、その中のアシュラです。興福寺の有名な国宝・阿修羅像は、インドの神様です。その阿修羅像は悪神的な存在、悪鬼的な存在なのですが、いわゆる「絶対悪」というものはインドにはありません。日本もそうですが、「絶対的な悪」を設定せずに、相対的に「良い」「悪い」とする。だから、悪神も良いことをする。良い神も悪いことをする。ギリシアの神々の世界もそうですが、日本の神々もインドの神々も、そういった意味では非常に相対主義的で、ある面で悲観的なところもあるけれども楽観的なところもある、ということが神話...

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