●「イエス・キリスト」という名の意味
初めまして。上智大学の竹内です。これから少しばかり、キリスト教について話をしたいと思います。2000年に及ぶ歴史があるキリスト教について、短時間で簡潔に話すのは難しいと思いますが、「キリスト教とは何か」ということを皆さんが問うたときに、考えるヒントになるようないくつかのことをお届けできればいいかと思います。
まず考えてみたいのは、「キリスト教とは何か」という問いです。この問いかけを言い換えると、次のような問いにもなるかと思います。それは「イエスとは誰なのか」ということです。イエス・キリストという名称自体はお聞きになったことがあるかと思いますが、彼は確かに歴史的な人物でした。今から約2000年前、大体紀元前6年から4年くらいに生まれ、そして紀元後30年頃に亡くなったと言われています。たかだか三十数歳という短い生涯だったのですが、この歴史的な人物であるイエスが人々の中に入っていくとは、どういうことなのか。
最初に、この「イエス・キリスト」という名称について確認しましょう。この「イエス」という名前は、ある意味ではとても平凡な名前だったようです。しかし、名前一つ一つには意味があります。「神は救い」や「神は救う」という意味が、この言葉の背後にはあるそうです。他方で、キリストとは何なのか。これは名前ではなく、ましてや家族名(ファミリーネーム)でもありません。もともとの意味は「油を注がれた者」という意味だと聞いています。
「油を注がれる」とはどういうことか。当時の人々は、いろいろな役職に就く際、王様を含めて油を塗られました。その「油を注がれた者」というのが「キリスト」で(これはやがて「救い主」という意味になりますが)、ギリシャ語では「クリストス」と言いました。
よく「イエス・(中黒)キリスト」という表記を見るかと思います。私はこの中黒にとても意味があると思います。どういうことかと言うと、この中黒は「イエスはキリストである」の「である」に当たるところなのです。「イエス」という固有名詞と、「キリスト」という深い意味を持った言葉を結び付けるのが中黒になります。「イエスはこの救い主である」、言わばこれは、一番短い信仰告白です。
彼はユダヤ人でしたから、「イエスはユダヤ人である」という表記もできるし、「イエスは男性である」でもOKで...