ウクライナの宗教と民族の歴史
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「ユニエイト」というあり方がウクライナの民族文化を醸成
ウクライナの宗教と民族の歴史(2)ギリシア・カトリック信仰と民族文化
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ウクライナ語を話す西ウクライナ地方の住人には、独特なギリシア・カトリック(ユニエイト教会)信仰が深い。対立と弾圧を余儀なくされた彼らの間には「教会に対する戦いは、文化に対する戦いだ」との言い回しがある。その手掛かりを、信仰と民族の複雑な歴史に探ってみる。(後編)
時間:17分34秒
収録日:2014年5月22日
追加日:2014年6月5日
≪全文≫

●ローマ・カトリックの東方拡大政策とギリシア・カトリック


 もう一度ギリシア・カトリックの話に戻りましょう。ギリシア・カトリックは、ローマ・カトリックと対等の扱いを求め、東方式の典礼儀式のやり方を維持することも求めました。そして、かつてのビザンツ帝国時代に、キエフを中心として持っていた伝統的な権力や権力の持ち方自体を認めるように条件も付けました。

 ポーランドの当時の王国はこれらの要求を認めましたが、国内には反対も多くありました。誰が反対したかというと、意外なことにポーランドのごく普通のカトリック教徒の市民たちからの反対が多数でした。

 なぜかと言うと、そもそもポーランドという国の存在意義は、西ヨーロッパから東に向けたキリスト教の拡大にあったからです。もっと正確に言えば、ローマ・カトリック教会による東方拡大の最前線、その最初に立つ人として、彼らは自分たちの使命感を持っていたのです。


●ギリシア・カトリックは、ポーランドの使命を砕いた?


 ところが、東方へ進んで出会ったのは、「いや、自分たちは、カトリックとしてローマ教皇の権威は認めます。ローマ・カトリックに戻ります」という言葉でした。ただ、「儀式や典礼だけは従来通り自分たちのやり方を認めてください」と言うウクライナ正教やロシア正教の正教会の人々だったのです。

 ポーランドのカトリックとしては妙な気分だったでしょう。「東へのカトリック拡大」という自分たちの存在意義を踏みにじるものと映ったのだろうと思います。これらのポーランド人たちが、西ウクライナからガリツィアに住むギリシア・カトリックのウクライナ人たちの前に、まず立ちはだかることになります。


●コザックと対立、さらに国内にも行き場を失う


 もう一つは、コザックです。日本ではしばしば「コサック」と呼ばれます。この人たちは、ロシア正教を中心とした正教会の熱烈な支持者でした。彼らから見たギリシア・カトリックは、正教会の儀式を持ちながらカトリックに転向する裏切り者ということになります。ギリシア・カトリックは、カトリックと連合・合同するに至ったという意味で「ユニエイト(ウニエート)」と名乗りますが、非常にうろんなもの、うさんくさいものとして、コザックから敵視されるのです。

 このようにしてギリシア・カトリックは、ポーランドのカトリック教徒とも、正教...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(序)『ばけばけ』と『神国日本』
ラフカディオ・ハーンの遺著『神国日本』の深い意義とは?
賴住光子
編集部ラジオ2026(6)賴住光子先生ラフカディオ・ハーン論
ラフカディオ・ハーン『怪談』と『神国日本』の深い秘密
テンミニッツ・アカデミー編集部
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
『孫子』を読む:地形篇(1)六地形の戦略を学ぶ
ベトナム戦争でホー・チ・ミンが学んだ『孫子』地形篇とは
田口佳史
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
変化する日本株式市場とPEファンド(1)近年急増するPE投資
プライベート・エクイティ・ファンドとは何か…その手法は?
百瀬裕規
新撰組と幕末日本の「真実」(3)「日野と多摩」の風土と天然理心流
田舎のヤンキー像は大違い…日野の豊かさと文武両道の気風
堀口茉純
「発想力」の技法を学ぶ(2)発見と探究(後編)
セブンカフェ、無印良品…成功事例に学ぶ「デザイン思考」
三谷宏治
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将
こどもと学ぶ戦争と平和(6)平和な社会を守るために
チャーチルの名著『第二次世界大戦』に学ぶ真の平和への道
小原雅博