新しい循環文明への道
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新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
人類が飛躍的に発展速度を増したのは産業革命だが、同時に「地球容量」という制約が姿を現した。持続可能性の課題はここに始まるが、次の文明の基盤となる「新しいフロー」の輪郭が見えてきた。三つの柱となるのは、再生可能エネルギー、都市鉱山、バイオマス。この三本柱による社会は、私たちが長く続けてきた「採掘文明」から「循環文明」への転換を意味する。この転換のカギこそ、私たち一人ひとりの自覚と行動である。(全2話中第1話)
時間:8分04秒
収録日:2025年12月3日
追加日:2026年1月1日
≪全文≫

●人類史の歩みと地球容量という制約


 皆さん、あけましておめでとうございます。テンミニッツアカデミー座長の小宮山です。年の初めですので、少し長い視野で、人類の来し方を振り返ってみましょう。

 今から約20万年前、私たちの共通の祖先はアフリカを離れ、世界各地に広がりました。その間、ネアンデルタール人やデニソワ人などと交配し(た証として)、かれらの遺伝子が私たちの遺伝子にパーセントのオーダーで残っています。しかし、いずれにしても今の人類は、種(species)として繁栄することができたわけです。

 その間に人類は文明を築き、暮らしを徐々に豊かにしていきましたが、その歩みは18世紀まで極めて緩やかなものでした。

 状況が一変したのは、200年前の産業革命です。蒸気機関に始まり、エネルギーと機械が結びつくことで、発展の速度は飛躍的に増大しました。

 この文明の歩みを端的に示す指標が平均寿命です。歴史の大半で人類の平均寿命は25歳ほどだったのですが、20世紀初頭でも31歳でした。ところが、現在では世界平均が70歳を超え、多くの国で80歳以上になっています。人類は確かに、文明を成功させたといえるでしょう。

 しかし同時に、発展の歴史は地球が抱える限界を露わにしました。

 人類は、食料生産のために荒野を農耕地に変え、材料とエネルギーを得るために、地下資源を採掘してきました。それによって繁栄したわけですが、地球の有限性をも明らかにしました。

 平均気温は産業革命前よりすでに1.2度上昇して、熱波や洪水や干ばつや森林火災といった極端現象が頻度を増して、その激しさを増し続けております。

 さらに、社会的な不平等が拡大して、分断は深まり、紛争も止まりません。もはや、予定調和的な安定を当然視できるという時代ではなくなってしまいました。

 これが、私たちの不安の根源にあるのだと思います。


●新しい文明の三つの柱


 しかし、希望はあるのです。人類はすでに、次の文明の基盤となる「新しいフロー」を手にしつつあります。「フロー(flow)」は語源的には、「自然に湧き出て止まらず続く、更新される動き」を意味するわけです。日本語で近い単語は、「循環」でしょうか。

 第一は、再生可能エネ...

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