●行動分析学と「個人攻撃の罠」
法政大学の島宗理です。今日は人間の行動の「なぜ」を読み解くというテーマで、いくつかお話をしようと思っています。
まず、今回「人はなぜ部屋を片付けられないのか」というテーマをいただいています。部屋を片付けることが苦手な人、得意な人というのがいると思いますが、それが得意な人から見ると、部屋を片付けられない人はだらしがないとか、きちんとしていないとか、親のしつけが悪かったとか、いろいろなことを言われてしまうのではないかと思います。人によるとは思うのでいますが、「いつも部屋が片付いてきれいな状態で暮らしたいなぁ」と思っているけれども片付けられない、という人も多いのではないでしょうか。
私が専門としている「行動分析学」という心理学では、通常の心理学とは実は大きな違いがあり、人の行動の理由を人の心や能力、性格といったもので説明しない、という特徴があります。ちなみに、そのように人の心や能力、性格といったもので説明をすることを、われわれは「個人攻撃の罠」と呼んでいます。
●言葉を言い替えているだけの「循環論」
スライドをご覧ください。例えば、この例でいうと、片付けられない理由を「だらしがない」と説明してしまうと、どうすれば片付けられるかという解決をするための考えに及ばなくなってしまいます。つまり、行動の改善に対して妨害的に働くということがあるということです。
もう1つ理由があります。次のスライドを見てみましょう。実は、人の行動をその人の性格とか心、能力で説明しようとすると、「循環論」というものに陥ってしまうのです。循環論とはどういうことかというと、例えばこの例では、「なぜ片付けられないのか」と片付けられない人の行動を見てその理由を推定するわけですが、それに対して「だらしがないから」という説明をしたとします。
次に「だらしがないのは、どうして分かるのですか」と質問をしてみます。つまり、だらしがないことの根拠を探すということになります。そうすると、今度はそれは「片づいていないから」ということになります。そこで、「なぜ、片付いていないのだろう」ともう1回聞いてみると、「だらしがないから」ということになります。
これはどういうこ...