●心と感情とは何か?--行動生態学から考える
総合研究大学院大学の長谷川です。今日は「心と感情の進化」というタイトルで少し考えてみました。このテーマは本当に大きいので、どういう切り口でどのように話すかですが、今回だけではなく、いろいろな話があると思います。
心や感情がどういうものかというのは、皆さん、すぐに想像はつくでしょうし、すぐ思い浮かぶものもあると思いますが、実は結構難しいことです。何がどうしているのか、また脳の働きがどうなっているのかということは、とても複雑な問題だからです。
人間も含め動物がどのように行動するかの基礎を探るのが動物の行動生態学ですから、これによって「心や感情とは何だろう」の答えを考えてみました。ここで大事なのは、動物は「動ける」ということです。動けるということは、動くに従っていろいろと状況が変わるし、その状況に応じて自分がまた動いて反応するということです。
それを時々刻々やらなくてはいけないので、動物は常に自分が直面しているもろもろの状況において、どうやって生き延びるか、どうすれば繁殖できるかということの適切な行動選択をしていかないといけません。それには、たくさん情報を集めて、今の状態を把握し、いくつかある行動の選択肢の中から、「これではなく、これにしよう」と決めなければいけない。そういうことをしているのが神経系の働きです。
神経系が中枢神経系としてもっと膨らんで塊になったものを「脳」といいます。脳のないミミズのような動物でも、神経系があるだけでちゃんと行動選択はしていきます。
ここで非常に重要なのは、人間はすぐにものが分かったり理解できたりして考えることを必ずしてしまうので、そういうことをしないと生きていけないかと思ってしまうのですが、それは人間に近いほど脳の発達した、(進化の)後のほうの動物の話だということです。
ミミズも昆虫も全て、いくつかの行動選択肢(こっちへ行くか・行かないか)などの中で一つの行動(こっちへ行く)と決めるのは、いわゆる感情とか情動です。
逃げるのか・戦うのか、怖いのか・怖くないのか、交尾したほうがいいのか、食べにいったほうがいいのか、今これを食べたほうがいいのか・もっと探して別のものを食べたほうがいいのかなどなど、その場面における行動の選...