●異様に大きなヒトの脳
さて、これが身長(のグラフです)。年齢をとっていくと、身長はどんどん大きくなります。(図の)こちら(実線)が男子、こちら(点線)が女子です。1年間では何センチ伸びたかという成長速度を表すのがこちら(下)です。どんどん上がっていくということは、速度としては最初は速いけれど、どんどん落ちるということになります。
(このグラフでは、Iが)インファント、(Cが)チャイルドフッドと推移していきます。男子がアドレッセント(A)に入ると、12~13歳あたりから急に速度が増しますが、(その後)また速度は低下して、20歳以上になるとほとんど増えないことを表しています。こちら(点線)は女子です。なので、急激に伸び率がガッと上がるときがある。これを「思春期のスパート」と呼んでいるわけです。
これはなぜ起こるかというと、結局、脳みそとからだの両方を同時に育てることは無理なので、先に脳みそをつくっておいて、からだは後から急速に追いつかせるしかないからです。両方に資源を割くわけにはいかないために、こんなに大きな脳みそを持っているヒトには、思春期のスパートがあるわけです。だから、脳みそがどれだけ大きいかというのが重要なことです。
これは、おとなの体重に対するおとなの脳みその重さ(の比率)でサル類全てを(並べてみたグラフです)。このように比較すると、それほど一直線には増えないのが分かる。Panはチンパンジー、Pongoがオランウータン、Gorillaはゴリラです。体重が増えても、脳重はそれに呼応してリニアに大きくはなりません。
ところが、ヒトはこれ(Homo)です。体重を40~50キログラムの間と置いても(脳は)1200~1400グラムなので、こんなに重い。体重をもっと80キログラムから100キログラムへと右の方に動かしてみても、脳が1200~1400グラムあるのが異様だというのはお分かりいただけると思います。ですので、普通の類人猿の3倍も脳みそが大きいのです。
●からだは成長し、脳の配線が変わる思春期
そこで、そうした脳に対応するには、非常に大変な生活史があります。そして、思春期というのは、(脳の)配線を変えていく時期です。大きさ(重さ)ではありません。大きさ1200グラム近く...