ヒトの性差とジェンダー論
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生物学的性差と文化的ジェンダー概念の入れ子構造の難しさ
ヒトの性差とジェンダー論(5)生物学的性差と文化
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
第二次世界大戦下、その影響で飢餓が続いたオランダで集団としてそのときに生まれた男の子にゲイが多いという話がある。それは母親が極度のストレスを受けた生物学的影響だというが、一方で日本の戦国時代のような戦場で見られる同性愛をどう考えればいいのか。そこで今回は、生物学的性差と文化、社会慣習という視点からジェンダーについて考えてみる。(2024年5月18日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第5話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分37秒
収録日:2024年5月18日
追加日:2024年9月16日
カテゴリー:
≪全文≫

●母親への極度なストレスが影響してMasculinizationを阻むのか


―― 前回のお話に戻ると、胎児が女の子の場合、お母さんの状況、テストステロンの状況によって変わるケースがあるということでした。この場合、女性の社会参加の形、すなわちどういう社会活動をしているかということで、傾向が変わってくることはあり得るのでしょうか。

長谷川 そのような細かい違いぐらいでは影響は受けないです。ただし、女の子の例ではなく、第二次世界大戦によって飢饉がずっと続いたオランダのようなところでお母さんが妊娠した結果、生まれた男の子の中には、うまくMasculinizationができなかった人が多かったようです。

―― それは飢饉が原因ということになるのですか。

長谷川 戦争によって全員が極度のストレスにさらされ、栄養も足りない飢餓状態がずっと何年も続いた。そのような中で妊娠して、生まれた男の子の場合、お母さんの体の状況が血液を通して行きますから、胎児の発生に影響します。それで、集団として、そのときに生まれた男の子はゲイが多いといわれています。

 だから、本当に極度のストレスを母親が得たときには何らかの影響はあります。ですが、普通の生活の中でいろいろな浮き沈みがあったぐらいでは変わらない。

―― なるほど。そうすると、例えば日本の戦国時代には、有名な話として、けっこう「衆道」という男の同性愛が多く、戦場でもそうだったといわれます。もちろん戦場には女性がいないというところもあるかもしれませんが。それが、もしかすると…。

長谷川 そうですね。そういうお稚児さんのような話は難しいのです。本当に脳の指向性が違った人たちだったのか。それとも軍隊や運動部の一部とか、あるいはカトリックや仏教の僧侶の世界は、完全に男だけで全てを賄っていく社会なので、どうしても生理的な処理をするときに、下の男の子を利用するということが起こるのです。

 それは、状況がそれしかなく、しかも権力構造があるため、上の人が下の人を使うということでお稚児さんのような存在が生まれて、存続していったのか。実際に、そういう状況だったと思うのですが、お稚児さんになっている人たちの脳の性的指向性が「Masculinizationができていない」とか「Defeminizationができていない」ような人たちだったのかどうかは、分からないです。...

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