進化生物学から見た「宗教の起源」
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私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
科学と技術
長谷川眞理子(日本芸術文化振興会理事長/元総合研究大学院大学長)
宗教の起源について、進化生物学はどう考えるか。イギリスの自然人類学者ロビン・ダンバーの著書『宗教の起源』によると、宗教はヒトにとって普遍的な現象であり、そこには脳が大きな役割を果たしているが、文化の影響も否めない。特にダンバーは新皮質の容量に注目し、「ダンバー数」と呼ばれる、集団としてヒトが気持ちよく維持できる人数を発見した。そこで今回はダンバーの著書を手がかりにしつつ、脳の役割と文化への影響を踏まえ、神秘思考、宗教的回心、古い宗教の一つであるシャーマニズムなどの解説を進めながら、「宗教とは何か」という難しい問題に迫っていく。(全3話中第1話)
時間:15分09秒
収録日:2023年12月20日
追加日:2024年1月30日
≪全文≫

●友人ロビン・ダンバーの研究と「ダンバー数」の発見


 こんにちは、長谷川眞理子です。今日は、「進化生物学から見た宗教の起源」というタイトルで、少しお話をしたいと思います。

 昔からそういうことを考えてはいたのですが、ロビン・ダンバーという人の本が2023年に白揚社から『宗教の起源:私たちにはなぜ神が必要だったのか』として(翻訳)出版されました。“How Religion Evolved”だから、まさに「宗教はどう進化したか」という本です。私は巻末にちょっとした解説を書いています。

 ロビン・ダンバーという人は私も個人的に友人で、ずいぶん長い付き合いですが、イギリスの自然人類学者で霊長類学者、また進化心理学者です。私もそうですが、もともと野生の霊長類の行動と生態を研究していて、彼は「ゲラダヒヒ」というエチオピアの高原にいるサルたちを研究していました。その頃から知ってはいるのですが、(私が)イギリスに行っていた間は、いろいろとお世話になりました。

 彼はその後、霊長類を観察するにとどまらず、人類学者として人類の進化の中で何が一番大事かと霊長類の行動と人間の行動を見比べると、脳の働きや心理などのところが非常に違うのでそこを解明したいということで、霊長類の行動生態学者から人類学・進化心理学に行った人です。

 彼の一番の業績についてですが、まず霊長類の脳で外側に新しくできた部分である新皮質の容量を調べました。その大きさは、霊長類が互いに知り合い、誰が誰でどういう関係なのかなどを理解して素直に付き合える範囲によってサイズが決まると考えました。それで、霊長類の新皮質の容量を測り、そのような脳容量を持った霊長類が自然に維持できる集団のサイズを計算したわけです。

 その延長として人間の新皮質を考えた彼は、「ヒトは大体150人が気持ちよく維持できる集団だ」ということを発見しました。そのことは「ダンバー数」と呼ばれて有名になっています。そういうことを研究して発見した彼が宗教について書いたのが今回の本です。

 この(脳の)図は、左側が前の方、右側が後ろの方で、真ん中で切ったものです。一番上のところが新皮質です。


●宗教とは何か――遺伝的進化と文化の進化から考える


 さて宗教につ...

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