進化生物学から見た「宗教の起源」
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
毛繕いを代行!?脳の大型化が可能にしたメンタライジング
進化生物学から見た「宗教の起源」(2)宗教の機能とメンタライジングの次元
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
宗教には主に5つの機能がある。世界の説明、道徳的価値体系提示、死と死後の世界への言及、世の悲惨に対する救済、内集団の結束を固め、外の集団と闘うといった機能だが、集団生活する霊長類にとって、内集団の結束は不可欠である。そのための仕組みとして、霊長類には毛繕い(グルーミング)があるが、進化した脳を持つヒトの場合、毛繕いに代わる方法として宗教や言語が生まれたのではないだろうか。そこで今回は、その可能性に迫る一つとして「メンタライジング」に着目し、宗教の機能とともに解説する。(全3話中第2話)
時間:16分49秒
収録日:2023年12月20日
追加日:2024年2月6日
≪全文≫

●「宗教」が持つ5つの機能


 さて、(今回は)宗教にはいろいろなことがある中で、宗教はどのような機能を持っているのか、宗教があると何がいいのかということです。

 これについてダンバーはいろいろな機能のことを話していますが、私流にいうと、一つには「世界の成り立ちや出来事の理由」について説明してくれる、例えば病気がなぜ起こるかといったことについて、因果的な説明を言ってくれることです。なぜ、こんなことになるのか。何が原因でこういうことになるのか。そういう分からないことを知りたい。その説明を宗教がしてくれるのではないかということは、一つあります。

 それから、「やっていいこと」と「悪いこと」に対する「道徳的な価値判断」ということがあると思います。普通の社会生活から出てきた処世術や経験的知の集積というものもありますが、何か超自然の存在が見ていて裁断するという権威づけのようなこともあるわけです。

 また前回、死後の世界を本当に信じている宗教が全部ではないと言いましたが、人間誰しも死んだ後の世界、魂の行方というのは怖いものです。その分からないものに対して安心の提供をしてくれるということが、一つあるのではないか。

 さらに、私もときどき思うのですが、世の中には本当に悲惨なこと、惨めなこと、もうどうしようもないことがよくあります。そういうとき、自分ではどうしようもないけれど、大きな存在が救ってくれるのではないかと信じることで、自分自身が慰めを得る、救いを得るという機能もあるのではないか。

 それから、よく宗教の戦争や闘いなどで使われることがあるように、内集団の結束を固めて相互扶助を促進する、「あいつら」といった外の集団と闘うときの要になるようなこともしているのではないか。

 ただ、結束を固めて相互扶助を促進し、外の集団と闘うというのは、それが必要だったから宗教が出てきたという、起源の問題というよりも宗教が先にあるからそういう内集団の結束を固めて外と闘う手段にするという機能を後から果たしているのではないか。

 宗教の機能においても、難しいことはいろいろあります。なぜ、それがあるといいのか、安心するのか。つまり普通ではできないことを説明してくれることで安心させてくれるのか。個人レベルでも集団レベルでも、いいこととして機能して...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保