折口信夫が語った日本文化の核心
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なぜ大晦日におせち料理を食べてはいけないか?神様の来訪
折口信夫が語った日本文化の核心(2)宗教文学発生説と「依代」
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
折口信夫は日本文学について、非常に早い段階から5音句と7音句から成る「律文学」であることに気づいた。これが神とコミュニケーションするための一つの約束事で、そこから日本の文学が発生したと考えた。そこで折口信夫が取ったのが「宗教文学発生説」である。そして神をもてなすための工夫から生まれたのが、大晦日の大掃除であり、正月のおせち料理である。ここには「依代」という大事な意味が込められている。(全4話中第2話)
時間:16分17秒
収録日:2022年9月13日
追加日:2023年1月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●なぜ日本の文学は歌が散文よりも古くからあるのか


 折口信夫は日本文学の成り立ちについて、非常に早い段階で「律文学」、つまり決まり事のある詩であることに気づきます。簡単にいうと「5音句」「7音句」に区切る。5音句と7音句に区切ると、なんとなく和歌になってしまう。なんとなく歌のように聞こえます。

 「よき人の よしとよく見て よしと言ひし 吉野よく見よ よき人よく見つ」

 これは「よい人がよしとよく見て、よしと言った吉野をよく見なさいよ、今のよい人たちも」という意味の1つの歌になっています。5音句と7音句に区切ると、なんとなく歌のように聞こえるのです。

 標語でも「狭い日本 そんなに急いで どこへ行く」や、ちょっとした注意の看板も「この土手に 登るべからず 警視庁」とするなど、5音句と7音句に区切れます。5音句と7音句に区切って声を掛け合うことが、神とのコミュニケーションのための1つの約束事だった。そこから日本の文学が発生するのです。

 さらには神様がやってきて、「おまえたちの村は、幸せにしてやろう」などと言って「呪禁」(じゅごん)、つまりおまじないの言葉を言ってくれる。それを長い間、数世代にわたって伝えていくことで、言葉が洗練されていく。これが「日本文学の発生」というわけです。

 これがまた難しくて、発生と成立はどう違か。成立はというと、712年に稗田阿礼(ひえだのあれ)が読んでいたテキストを、稗田阿礼がいなくなっても読み伝えられるように太安万侶(おおのやすまろ)が書き連ね、注記をつけて誰もが読めるものにした。これを712年に元明天皇に献上したのが、成立です(編注:(『古事記』が編纂された年)。

 また『万葉集』は、8世紀中盤頃に編纂されます。編纂者の1人に大伴家持(おおとものやかもち)もいたであろうと考える。これらは時間的なものですが、例えば、このような考え方もあるのです。

 なぜ日本の文学は歌のほうが古く、散文の発達が遅れているのか。なぜ文学という意識が生まれてくるのか。それは、文学という意識が生まれてくるために宗教的な何らかの詞章が文学になっていく道筋があるから。なぜなら、神様が与えてくれた言葉を長く保持するにはそうする必要があるから。いわゆる無文字社会(文字がない社会)では、そういう形でしか長く言葉を伝えていくことができないから、というわけです。

 ...

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