司馬遼太郎のビジョン~日本の姿とは?
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
徳川家康ではなく織田信長…司馬文学が描く「別の可能性」
司馬遼太郎のビジョン~日本の姿とは?(5)移動と破壊と自由の実現
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
『ペルシャの幻術師』に始まった司馬文学は、『草原の記』で終わる。大陸ロマンを奉じた司馬遼太郎にとって、馬賊への憧れから転じた「移動と破壊と自由の実現」という夢を日本の歴史小説で仮託させたのが「英雄が自由な創意でやる」戦国乱世と幕末という時代で、織田信長、坂本龍馬、土方歳三などによって、あり得たかもしれない日本の「別の可能性」を実現させるには格好の動乱期だった。それ以外のほとんどで見られる、巨大化したがゆえに現状維持に邁進するシステムとその教条化、またそのためにイノベーションができなくなってしまった現実こそ、司馬の「日本嫌い」の元凶だった。(2023年3月16日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「いまこそ読まれるべき司馬遼太郎~その過去、現在、未来」より、全6話中第5話)
時間:10分57秒
収録日:2023年3月16日
追加日:2023年6月18日
≪全文≫

●『ペルシャの幻術師』に始まり『草原の記』に終わる


 司馬遼太郎さんは、日本のものをたくさん書いて、日本に対する文明論的な提案もたくさんなさったけれども、結局はどうしてもモンゴルのことを書きたい。シルクロードやユーラシア大陸、モンゴルからハンガリーまでずっとつながっているような大草原の世界。ちょっと横(東あるいは西)にいけばイランにいくし、カスピ海も黒海もある。下がっていく(南にいくと)と万里の長城を乗り越えて中国にいく。そのような大陸的なスケールを書きたい。

 また、そういうことを実現したモンゴルの人たちに一番親近感を持つ。なぜなら、彼らはいつも移動していたから。定住して何かにしがみつくことなく、次々と自由にイノベーションをしながら自分たちの生き方を見つけていく。常に移動しながら、遊牧や商業的交易、騎馬軍団を鍛え、乱暴な話ですが軍事力によって略奪することで生きていくような方法を自由に見つけていたわけです。

 略奪や戦争、皆殺しのような話になると、司馬遼太郎さんの綺麗なイメージでのモンゴルではどうしても回収しきれない、いろいろなものがもちろん出てきます。しかし、司馬遼太郎さんのロマンとしてのモンゴルは、あくまで自由人としての馬賊の延長線上のモンゴルです。その世界は、どこまで行っても司馬遼太郎さんについて回っている。

 司馬遼太郎さんが一番最後に、小説というよりはエッセイですが、まとまった量の散文的な作品として書いたのは『草原の記』という作品でした。これは、司馬遼太郎さんがモンゴルに行って取材し、長編エッセイのような小説っぽい感じもある作品として書いたものです。この『草原の記』が最後のまとまった作品であるとして司馬遼太郎さんの世界を考えると、『ペルシャの幻術師』に始まって『草原の記』に終わっている、その途中に挟まっている日本のものは、どこまで行っても実は司馬遼太郎さんの本筋ではない(ということになる)。


●騎馬民族にふさわしい舞台としての戦国・幕末


 司馬遼太郎さんは本当はモンゴルが大好きで、少し語弊のある言い方ですが、日本は嫌いだった。嫌いだったけれども書ける世界はあった。それは、例えば忍者であったり、先述しているように土地にしがみついて、あるシステムを維持して安定的なものを築こうとするのではなく、戦国時代、幕末維新、動乱期、高杉晋作、土方歳...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
「進化」への誤解…本当は何か?(9)AI時代の人間と科学の関係
科学は嫌われる!? なぜ「物語」のほうが重要視されるのか
長谷川眞理子
独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素
未来を洞察するために「独裁・共和政・民主政」の循環を学べ
本村凌二
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(8)秀長の死の影響と秀吉政権の瓦解
「家康対奉行」の構図は真っ赤な嘘!? 秀吉政権瓦解の真相
黒田基樹
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIは間違いが分からない…思考で大事なのは訂正可能性
中島隆博
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓