AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「信頼できない語り手」とは?村上春樹の謎に迫る文芸批評
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(4)村上春樹の謎と信頼できない語り手
與那覇潤(評論家)
加藤典洋氏の代表作の1つに、村上春樹の作品を詳細に分析した『村上春樹イエローページ』がある。加藤氏は当時まだ評価が高くなかった村上作品を初期から高く評価していたが、それはなぜか。そこには文芸批評の用語である「信頼できない語り手」という見方と関連があるという。どういうことなのか。AIにはできない文芸評論家の分析という点も含めて解説する。(全7話中第4話)
時間:10分41秒
収録日:2025年4月10日
追加日:2025年7月16日
≪全文≫

●村上春樹の作品を初期から高く評価


 もう1人、拙著の主題である、江藤淳さんよりもだいぶ若く、ある意味で江藤さんに挑戦した文芸評論家ともいえる加藤典洋さんの代表作の1つに、『村上春樹イエローページ』という本があります。

 村上春樹さんは今でこそノーベル文学賞をとるのではないかといわれるようになって久しいのですが、「村上さんの作品は軽い風俗小説であって、売れてはいるがそれほど深みはない」と文芸評論業界では貶されていた時期が長かった。それに対して、加藤さんは初期から、「いや、それは違う。村上さんの小説は本当に素晴らしいものを持っている」と熱心に主張された先駆者でもありました。

 この『村上春樹イエローページ』はどういう本かというと、まず刊行されたのは1996年、平成の序盤頃です。当時、まだ村上さんは文壇では評価が低かったのですが、「そんなことない。この人はすごいのだ」ということを書いた本であります。1996年に単行本が出て、その10年後の2006年に幻冬舎文庫になっているのですが、文庫になるまでに19刷だったというから、かなりのヒットです。それほど「村上春樹は、評論家の人は皆バカにしているけど、僕はいいと思う」という人に対して、「でしょう?その良さはここから来ていると思うよ」ということを教えてくれた書物でもあるわけです。

 今日振り返って面白いのは、この本のタイトルにあるように――「イエローページ」とは電話帳のことです――少しデータブックのような性格もある書物であることです。

 当時、加藤さんは明治学院大学で先生をしていたのですが、自分一人で書くのではなく、ゼミ生を中心に計31名――謝辞の形で名前が残っているのですが――を動員して、この時点で村上さんの長編小説は8冊あったのですが全長編を2年間かけて、しかも一人で読むのではなくて(約)30人がかりで徹底的に読解したのです。

 普通は何かを読む際にメインのストーリーを追って読むだけでそんなところは読み飛ばしてしまうというところまで徹底的に考察するということを行った本が、この『村上春樹イエローページ』という本です。

 ある意味で、人力でビッグデータ分析をしているようなところもある書物です。それこそ生成AIがとにかくひたすらデータとしてテキストを読みまくって、「どうもこういう表現が来たら、次はこういうふうに言うものらしい」ということを学...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(1)政治家・石原慎太郎の源流と核の問題
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿…対比で見えてくる現代的課題
片山杜秀
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
真山仁の小説論(1)想像力と技術の不足
読み手の琴線に触れる技術が失われてきている
真山仁
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
編集部ラジオ2026(30)AI時代の企業と道徳
【10minで考える】CPO(最高哲学責任者)…AI時代に必須の哲学とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(6)リベラルアーツの本質
自分にしかできない自分の世界を味わうために、他の人とつながる
橋爪大三郎
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(4)5人の皇帝と現代中国
特筆すべき5人の皇帝…中国史を知らなければ現代中国もわからない
宮脇淳子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
不便益システムデザインの魅力と可能性(2)不便がもたらす4つの益
写ルンです、おやつ300円まで…不便がもたらす益の数々
川上浩司