いま夏目漱石の前期三部作を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
伊藤博文暗殺…日本近代化で本当にいいことがあったのか
いま夏目漱石の前期三部作を読む(8)『門』の世界観と日本の近代化
與那覇潤(評論家)
「この世の中はデタラメにできている」…実家に残された屏風の売買を通じて世の中の不条理を感じた『門』の主人公・宗助。その後、略奪した妻の元夫である安井が戻ってくることを知ると、逃避するようにして禅の修行へ向かうが、これは『三四郎』のエピソードが形を変えたものであると與那覇氏は語る。今回は、明治維新後に起こった満洲での伊藤博文暗殺という歴史の激動を取り上げながら、『門』の世界観と日本の近代化への批判について解説する。(全9話中第8話)
時間:10分31秒
収録日:2024年12月2日
追加日:2025年4月20日
≪全文≫

●この世の中はデタラメ…屏風売却問題で描かれた『門』の世界観


 そのこと(編注:文明を身につければ身につけるほど、自分の頭で考えようとすればするほど、人は実は不幸になっていくのではないか)がよく分かるのが(次のことがらではないか)。結局、この夫婦、主人公の宗助の不祥事のせいで実家も傾いてしまって、宗助のお父さんは死んでしまい、弟の小六の面倒を宗助が見ることになってしまうのですが、いろいろ遺品とかを形見分けをしても、あまりいいものは残っていないのです。もう家が傾いていましたから。

 ただ、江戸時代の酒井抱一という画家の描いた屏風だけが、微妙にちょっと価値ありげな遺品として残っていて、全然不相応なのですけれど、一応それだけは崖の下の家に実家から引き取って宗助は持ってきていたのです。しかし、とにかく家計が苦しいのと、屏風は1個いいのがあってもあまり意味がないので、宗助と御米の夫婦は、これを売ろうという決意するわけです。

 そしてこの夫婦が、これを売りますということで古物商を家に呼んで、「この屏風は酒井抱一なのですけれど、いくらぐらいになりますか」と聞くと、最初、その古道具屋は「6円」と言うのです。それで、「えーっ」と驚いて、「一応名のある画家です、抱一のものですよ」と言っても、「いやあ、抱一は最近流行らないですよ、6円」と言うのです。それで、売ろうと決意したけれど、6円はないだろうと思い、「それならいいです」と断ります。

 ところが、その古道具屋は、「あの屏風ですが」と別の日にまた来るわけです、物欲しげに。「そこまで言うならもうちょっと上げてもいいんですけれどね」などと言って、「どうですか」と聞くと、最初は「6円」と言いましたけれど「35円」と6倍ぐらい値段が上がったのです。そこで35円ならばまあいいかということで、この宗助と御米の夫婦は、実家の形見の屏風を手放すわけです。

 ところが、この買い取った古道具屋はその後何をしたかというと、もっと金を持っている崖の上の坂井の家、つまり大家の家に、屏風を持っていって売っていたのです。そこで、もっと金を持っている大家でもある崖の上の坂井は、いくらお金を古物商に払ってその屏風を買ったかというと、なんと80円払っていたのです。しかも、80円ならお買い得だろうと思って坂井は払っているわけです。

 同じ屏風なのに、最初は6円。では、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家(1)恩師との出会い
六甲おろし、栄冠は君に輝く、長崎の鐘…古関裕而の魅力
刑部芳則
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読む(1)あらすじと賢治の原稿
未完の長編『銀河鉄道の夜』の魅力と宮沢賢治の思想に迫る
鎌田東二
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
クラシック音楽で世界史がわかる…宗教音楽からクラシックへ
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
企業改革の核心は何か(1)組織の危機をいかに克服するか
V字回復のためには社員に「個人の痛み」を迫る覚悟を持て
三枝匡
編集部ラジオ2026(31)鶴見太郎先生の「公開収録」のご案内
【公開収録のご案内】鶴見太郎先生:ユダヤ人と世界史…その歴史の教訓とは
テンミニッツ・アカデミー編集部