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おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当

おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む

平野多恵
成蹊大学文学部日本文学科教授
情報・テキスト
『おみくじの歴史 神仏のお告げはなぜ詩歌なのか(歴史文化ライブラリー583)』(平野多恵著、吉川弘文館)
平野多恵氏提供(吉川弘文館より)
日本人にとって身近な「おみくじ」。しかし、その歴史を知る機会はあまり多くない。つい吉凶にばかり目が行きがちなおみくじだが、本当に受け取るべきメッセージはそこではないという。どういうことなのか。まず、おみくじの成り立ちと、おみくじが何倍も意味あるものになる「基本的な読み方」を解説する。(全5話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:41
収録日:2023/11/10
追加日:2023/12/20
≪全文≫

●おみくじの歴史をひも解く


―― 皆さま、こんにちは。本日は平野多恵先生に「おみくじの歴史」ということで講義をいただきたいと思っております。先生、どうぞよろしくお願いいたします。

平野 よろしくお願いいたします。

―― 今度、平野先生が吉川弘文館から『おみくじの歴史 神仏のお告げはなぜ詩歌なのか(歴史文化ライブラリー 583)』というご本を発刊される(2023年12月20日発刊)ということで、その内容に即した形で「おみくじ」の話を伺ってまいりたいと思います。

 おみくじというと、よく皆さまは神社ですとかお寺などで引くということで、今回、まことに興味深いのが、大体この運勢を見まして、そこに書いてある「学問ならず」とか、「待ち人来たらず」みたいなものを見るのですが、おみくじは本来そこではないのだよというところから始まるわけですよね。

平野 そうなのですよ。皆さんおみくじというと、まず吉凶を見て一喜一憂する方が多いと思うのです。

―― これは末吉でございますけれども…。

平野 おみくじの歴史をたどっていきますと、神様のお告げをいただくというのがそのルーツにありまして、日本の神は和歌でお告げをしたという伝統があり、それが今のおみくじにも残っているといいますか、影響を与えているのです。

―― このおみくじでいうと、ここにまさに歌が書いてあるというところになるわけですね。これはおみくじによって場所が変わるところもあるとは思うのですけれども、だいたい、そういう和歌であったり、あるいは今日お話しいただく漢詩であったりが載っているという形になるのですかね。

平野 全部ではないのですけれども、「和歌のおみくじ」と「漢詩のおみくじ」が1つの大きな流れとしてあります。そのほかのものも、もちろんありますが、やはり歴史的にたどっていけるのは、和歌や漢詩のおみくじということになります。

―― ということですね。ですから、今回の講義では、まさに本のタイトルではないですけれども、なぜ和歌であったり漢詩であったりするのか。おみくじを「和歌で読む」というのはどういうことなのか。そもそも和歌が神様のお告げだというのはどういうことなのか。その辺りのことを講義でぜひ聞いてまいれればと思います。よろしくお願いいたします。

平野 よろしくお願いします。


●自分の願いと神仏からのお告げの歌を照らし合わせる


―― 先生、せっかくでございますので、このおみくじを、特に和歌で書いてあるものを「どう読めばいいか」ということでご解説をいただきたいのですが。

平野 はい。

―― 例えば、このおみくじでいくと、〈春くれば花ぞさくなる木の葉(は)みなちりてあとなき山のこずえに〉という和歌が書いてありますが、これはどのように読み解くのでしょうか。

平野 まずこの歌は、「春くれば花ぞさくなる」という上の句がポイントになります。どういう歌かというと、冬になると、山の木々の葉っぱが全部散ってしまうのです。跡形もなくて、今は枝だけだよという歌なのですけれども、その木は春になると花がいっぱい咲くのだよということを詠んでいます。それでポイントになるのが、この「春くれば花ぞさくなる」というところで、今は枯れ木かもしれないけれども、春になったら、冬は枯れ木だけれども春になったら花が咲くのだよということで、末吉というか、後々はいいという歌なのです。

 こういう和歌のおみくじですと、自然のものを詠んで、この歌だったら枯れ木になって葉っぱを落として枯れ木になってしまった、その木に自分の今の人生というか状況を重ねて読むというのが、おみくじの和歌の一つのパターンとしてあります。

 おみくじのその和歌の下の解説を読んでいただきますと、例えば「しだい々々に運が開けていって幸いが増していく」というのは、春になったら花が咲いていくということですし、「今、冬で枝だけであっても焦ってはいけないよ」とか、あるいは、「心を柔らかくして交際したほうがいいよ」というような、つまりは、枯れ木ではなくて、「ゆくゆくは芽吹いていくので、もっと柔軟に考えてくださいね」というようなアドバイスが書かれています。その辺りの解説もよく読んでいただくと、和歌の世界を味わえるのではないかなと思います。

―― これを引いたときの、例えば自分の課題であったり、自分のテーマに基づいてこの歌をどう読むかというのが本来のおみくじなのでしょうか。

平野 そうです。自分の願いとか悩みのようなものがあって、それに対して神仏に祈ってメッセージをいただく、お告げをいただくというのがおみくじの本来のあり方なのです。ですから、その和歌が自分のその悩みなり願いにとってどういう意味が...
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