おみくじと和歌の歴史
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
征夷大将軍も勅撰和歌集の撰者も「おみくじ」で選ぶ?
おみくじと和歌の歴史(2)おみくじのルーツ
平野多恵(成蹊大学文学部日本文学科教授)
おみくじには3つのルーツがある。1つ目が「和歌みくじ」、2つ目が「神仏の前で引く自作のくじ」、3つ目が「漢詩みくじ」だが、それぞれどのようなものなのか。また、歴史のなかでは、くじ引きで征夷大将軍が決まった「くじ引き将軍」の事例や、勅撰和歌集の撰者をおみくじで決定した例などもある。そのような実話も交えながら、和歌や漢詩を使ったかつてのおみくじについて振り返り、おみくじの役割について解説する。(全5話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:6分49秒
収録日:2023年11月10日
追加日:2023年12月27日
≪全文≫

●おみくじのルーツにある三つの形式


―― それでは先生、続きまして、まさに「おみくじの歴史」について伺いたいと思います。

 歴史の教科書などでも、それこそ大昔には「太占(ふとまに)」とか「亀卜(きぼく)」といって、動物の骨を焼いたり、亀の甲羅を焼いたりしましたが、それは割れた跡で占うわけですか。どういう占いになるのですか。

平野 そうですね。ひび割れ方によって吉凶を占うのですけれども、実際どうなっていたらどうなのかというのは、実は本当の昔の資料というのはないのです。ただ、江戸時代ぐらいになると、亀卜には多少は「これが吉だ」というような資料があるのですけれども、いずれにせよ、その現れた形、(つまり)神様に祈念して、甲羅や骨を焼いて出てきた形が神意の現れだと考えて、そこから吉凶を解釈するというものだったのです。

―― そのような太占や亀卜というものがもともと太古からあったという中で、それがだんだん現代のおみくじに至るには、変化していく中で3つのルーツがあるとご本の中でお書きになっていました。その1つ目が「和歌みくじ」、2つ目が「神仏の前で引く自作のくじ」、3つ目が「漢詩のみくじ」で、だいたいこの3つがルーツなのだということでございますが、この3つは、それぞれ概略するとどういうことになるのでしょうか。

平野 まず「和歌みくじ」のほうは、あとで詳しくお話ししますけれども、五・七・五・七・七、三十一文字の和歌を詠んだのは、スサノヲノミコトという神様だと考えられていて、和歌の始発に神様がいたと信じられていたのです。平安時代くらいから、スサノヲノミコト以外も、いろいろな神様が和歌を詠んで、人間にお告げをするというようなことが行われるようになってきまして、それがおみくじの中に取り込まれていったというのが「和歌みくじ」のルーツです。

 それから、「漢詩みくじ」のほうですが、これは中国から入ってきた「漢詩みくじ」が江戸時代に爆発的に流行して、それが現代まで、先ほど見ていただいた浅草寺さんの「漢詩みくじ」のような形で今も使われています。

 それから、「神仏の前で引くおみくじ」ですが、現代で引くようなおみくじが定着する前は、実は1回ごとに、自分が何か悩んで決めかねることがあったときにそれを神仏の前で祈って、自分がやろうとしていることが吉...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
岡倉天心『茶の本』と日本文化(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心の『茶の本』…世界に向けた日本伝統文化の発信
大久保喬樹
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
印象派の誕生~8人の主要な芸術家
マネ、モネ、ルノワール…芸術家8人の関係と印象派の誕生
安井裕雄

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ