おみくじと和歌の歴史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ和歌で神意を伝えるのか…古典文献の事例と巫女の歌占
おみくじと和歌の歴史(3)神意を伝える和歌と歌占
平野多恵(成蹊大学文学部日本文学科教授)
古来より日本人に親しまれてきた和歌。神様として信仰されたスサノヲノミコトが最初に詠んだとされる和歌は、神意を人々に伝えるための重要なツールだったが、人々がその神意を受け取るために必要としたのが巫女だった。『伊勢物語』や『保元物語』の話などを交えながら、神様が歌によって神意を伝えた伝承を紹介するとともに、神様と人を仲立ちする巫女の存在によって確立された歌占(うたうら)の成り立ちも解説する。(全5話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分14秒
収録日:2023年11月10日
追加日:2024年1月3日
≪全文≫

●神様と人間のコミュニケーション手段としての和歌


―― そういうものがもともとのおみくじのあり方なのだと分かってくると、では現代人としてどう考えるべきかという問いがまた一つ出てくると思うのです。

 ここで先生にお聞きしたいのが、先ほど(第2話)のお話でもあったように、神様が和歌で神意を伝えるというところです。中国の場合は漢詩だったということですけれども、なぜ日本で和歌がそういう役割のものになっていくのでしょうか。先ほども少しお話しいただきましたけれども、さらに詳しくお話しいただくとすると、どういうことになりますか。

平野 平安時代に一番最初に天皇の命令で作られた勅撰和歌集は『古今和歌集』です。醍醐天皇の命令で作られたものですけれども、その『古今和歌集』の序文の中に、「素戔嗚尊(スサノヲノミコト)よりぞ三十一文字(みそひともじ)」の歌というものが始まった、と書かれているのです。

 それで、(そのスサノヲノミコトの歌は)〈八雲立つ出雲八重垣つまごみに八重垣つくるその八重垣を〉。つまり、スサノヲが出雲の国に宮殿をつくろうとしたときに、出雲の国を見て、たくさんの雲(八雲)が立ち上っている、そこに自分は垣根をつくって、その中に妻のクシナダヒメをこもらせて、妻と一緒に住むのだ、安心な宮殿をつくるのだという、意気込みの歌です。

 それが和歌の一番初めだということです。スサノヲノミコトが三十一文字の和歌を詠み始めたのだというのが、歌人たちの和歌の世界で信じられていたのです。

 なので、和歌は神様が最初に詠み始めたのだという信仰があって、後々、平安時代になって、他の神様も和歌を詠むようになったといいますか、和歌で人間に思いを伝える、お告げを伝えるようになったという話があります。

―― 実際にそういう事例が古典文献に出てくるということなのですね。

平野 そうですね。有名なところでは歌人の和泉式部と、京都の貴船明神とのやりとりというのはよく知られています。これは『後拾遺和歌集』の中に載っているのですけれども、和泉式部が男に捨てられて、傷心のあまり貴船明神に参拝したのです。そこは水の神様なので、水辺で、夏の夜だったのでしょうけれども、蛍がたくさん飛び違...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
岡倉天心『茶の本』と日本文化(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心の『茶の本』…世界に向けた日本伝統文化の発信
大久保喬樹
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
〈続〉認知バイアス~その仕組みと可能性(1)概念のバイアス〈前編〉
非合理なのに誰もがハマる「概念のバイアス」とは
鈴木宏昭