おみくじと和歌の歴史
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なぜ和歌で神意を伝えるのか…古典文献の事例と巫女の歌占
おみくじと和歌の歴史(3)神意を伝える和歌と歌占
平野多恵(成蹊大学文学部日本文学科教授)
古来より日本人に親しまれてきた和歌。神様として信仰されたスサノヲノミコトが最初に詠んだとされる和歌は、神意を人々に伝えるための重要なツールだったが、人々がその神意を受け取るために必要としたのが巫女だった。『伊勢物語』や『保元物語』の話などを交えながら、神様が歌によって神意を伝えた伝承を紹介するとともに、神様と人を仲立ちする巫女の存在によって確立された歌占(うたうら)の成り立ちも解説する。(全5話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分14秒
収録日:2023年11月10日
追加日:2024年1月3日
≪全文≫

●神様と人間のコミュニケーション手段としての和歌


―― そういうものがもともとのおみくじのあり方なのだと分かってくると、では現代人としてどう考えるべきかという問いがまた一つ出てくると思うのです。

 ここで先生にお聞きしたいのが、先ほど(第2話)のお話でもあったように、神様が和歌で神意を伝えるというところです。中国の場合は漢詩だったということですけれども、なぜ日本で和歌がそういう役割のものになっていくのでしょうか。先ほども少しお話しいただきましたけれども、さらに詳しくお話しいただくとすると、どういうことになりますか。

平野 平安時代に一番最初に天皇の命令で作られた勅撰和歌集は『古今和歌集』です。醍醐天皇の命令で作られたものですけれども、その『古今和歌集』の序文の中に、「素戔嗚尊(スサノヲノミコト)よりぞ三十一文字(みそひともじ)」の歌というものが始まった、と書かれているのです。

 それで、(そのスサノヲノミコトの歌は)〈八雲立つ出雲八重垣つまごみに八重垣つくるその八重垣を〉。つまり、スサノヲが出雲の国に宮殿をつくろうとしたときに、出雲の国を見て、たくさんの雲(八雲)が立ち上っている、そこに自分は垣根をつくって、その中に妻のクシナダヒメをこもらせて、妻と一緒に住むのだ、安心な宮殿をつくるのだという、意気込みの歌です。

 それが和歌の一番初めだということです。スサノヲノミコトが三十一文字の和歌を詠み始めたのだというのが、歌人たちの和歌の世界で信じられていたのです。

 なので、和歌は神様が最初に詠み始めたのだという信仰があって、後々、平安時代になって、他の神様も和歌を詠むようになったといいますか、和歌で人間に思いを伝える、お告げを伝えるようになったという話があります。

―― 実際にそういう事例が古典文献に出てくるということなのですね。

平野 そうですね。有名なところでは歌人の和泉式部と、京都の貴船明神とのやりとりというのはよく知られています。これは『後拾遺和歌集』の中に載っているのですけれども、和泉式部が男に捨てられて、傷心のあまり貴船明神に参拝したのです。そこは水の神様なので、水辺で、夏の夜だったのでしょうけれども、蛍がたくさん飛び違...

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