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江戸時代に流行した「歌占本」…その実際の占い方は?

おみくじと和歌の歴史(4)歌占本の流行と歌占の方法

平野多恵
成蹊大学文学部日本文学科教授
情報・テキスト
『おみくじの歴史 神仏のお告げはなぜ詩歌なのか(歴史文化ライブラリー583)』(平野多恵著、吉川弘文館)
平野多恵氏提供(吉川弘文館より)
神意を伝える歌占(うたうら)は、江戸時代になると「歌占本」が登場し、流行することになる。では、当時の人々は、いったいどのようにして歌占をしていたのだろうか。そこには易の占いも影響しているという。実際に賽と歌本を使って、歌占の方法と魅力を体験する。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:08:57
収録日:2023/11/10
追加日:2024/01/10
キーワード:
≪全文≫

●なぜ江戸時代に「歌占本(うたうらぼん)」が大流行したか


―― 平野先生、今(第3話で)お話しいただいた謡曲についてですが、梓弓で歌占をするというのは室町時代のお話だというところですけれども、そこからさらに時代が下って江戸の時代になってくると、今度は「歌占本(うたうらぼん)」というようなものが流行っていくということになるわけですね。どうしてそういうものが流行るということになるのでしょうか。

平野 江戸時代は基本的にいろいろな占いが流行った時代なのです。なので、その中で和歌の占い、歌占というのが流行ってきたというのは一つあると思います。

 それからもう1つは、先ほど(第3話で)お話しした漢詩のおみくじが江戸時代に流行っていくのですけれども、その流行を受けて、歌占の本も「歌占みくじ」といわれるようになって、いろいろな本が作られるようになっていくというのもありますね。

―― なるほど。今回、その貴重な資料を先生にお持ちいただいているのですけれども、これがまず、『元三大師(御籤)』(がんさんだいしみくじ)という漢詩のものですね。

平野 はい。

―― 先生、これは何年くらいの本になるのですか。

平野 17世紀の後半くらいの漢詩みくじの本です。ここを見ていただくと分かるように、挿絵と、それから五言絶句ですけれども漢詩4行の漢詩と、その下に少しだけ解説が書いてあります。なので、漢詩みくじの本の中でも初期のものです。

―― このような本が流行によって、こんな小さい本にもなるということで、本の中も、ずいぶん細かいですね。

平野 ええ。すごく流行してくるので、身近に持ち歩いて、いつでも占いたいというような形で、このような小さな本も出版されています。

―― 持ち運び用ということですね。

平野 そうですね。

―― 最初に漢詩みくじでこういう本ができて、それに影響を受けて和歌も本になっていくということで、先生にお持ちいただいたのがこちらでございましょうか。これは、先ほどと同じように開かせていただくと、こうなってくるというところですね。

平野 そうですね。ここに「大吉」と書いてあるのですけれども、もともと歌占には吉凶はついていなかったのです。それが、『元三大師御籤』に吉凶がついていましたので、その影響を受けて、やはり分かりやすいので、歌占本も吉凶がついてくるようになってくるということがあります。

 ちなみに、いちばん最初の「一・一・一」というところを開いていただくと、謡曲の歌占の弓枝を持っている巫女が描かれているのですけれども、謡曲の歌占の流れの中に、こういう江戸時代の歌占本もあるのだなということが分かると思います。だから、ここに謡曲の歌占も踏まえた歌が書かれているのです。


●賽を振り64首から1つが選ばれるーー歌占のやり方


―― はい。ということで、こういう本で実際にどう占ったのかということなのですが、今回、実は先生に貴重なものを持ってきていただいています。先生、これは一体何になるのでしょう。

平野 こちらは歌占の賽(さい)です。

―― 賽子(さいころ)の賽ですね。

平野 はい、賽子の賽です。歌占というのは、だいたい64首で1セットというものが多いのですけれども、64首の中から1首を選ぶのにこの賽を振るのです。

―― どのようにやるのか、やってみていただいてよろしいですか。

平野 はい。では振ってみます。

―― 本来は何か唱え事をするのですか。

平野 そうですね。最初に、歌占は呪文の歌、呪歌を唱えるのです。歌占が当たるように祈るための歌です。いろいろなものがあるのですけれども、例えば〈ちはやぶる神の子どもの集まりて作りし占は正しかりけり〉ということで、神様の子どもが集まって作った占いは的中するんだなと言って、最初に的中すると予言しておいて祈るというような歌を詠みます。

―― はい。そのような歌を最初に唱えてから、この賽をどのように使うのでしょうか。

平野 「天」「地」「人」が3つずつ書かれた賽を振ります。精神集中して振っていきます。そうすると、天が1つ、地が1つ、人が2つという結果が出ましたので、これで64首から1首が選ばれるわけですね。

―― ということで、こういうものが出たら、こういうご本で実際に見ていくということになるのですけれども、先ほどの「天が一、地が一、人が二」というのは、こちらだということで、これは大変きれいな挿絵の本でございますが、どんなことが書いてあるのでしょうか。

平野 〈昆陽の池あやめにまじるかきつばた花ゆえ人にとはれこそすれ〉と書いてあります。

 これはどういう歌かといいますと、昆陽の池というのは池の名前なのです。奈良県にある池で、あやめに混じってかきつばたが咲いている。菖蒲のことですね。現代の花あやめだと...
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