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江戸時代の新宿…水辺の景勝地としての名残、熊野神社

『江戸名所図会』で歩く東京~上水と十二社(2)水辺の観光地としての新宿

堀口茉純
歴史作家
概要・テキスト
世界でも有数の上水道が整備されていた江戸の街。とくに新宿エリアには、玉川上水のみならず、神田上水も流れていたが、そこは牧歌的な観光地としても人気を集めていた。『江戸名所図会』をひもときながら実際に新宿十二社 熊野神社に足を運び、自然に恵まれ、魅力的な水辺としてレジャースポットとなっていた新宿の一面を解説する。(全2話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14:37
収録日:2024/02/19
追加日:2024/05/12
≪全文≫

●のどかな観光地だった神田上水


―― 堀口さん、続きまして、この絵でございますけれども、これは『江戸名所図会』の絵ということでございますね。

堀口 はい。そうなのです。実は、新宿エリアには、玉川上水だけではなくて、神田上水も流れていたのです。

―― そうですね。位置的にいうと、井の頭の池から来るとなると、自然に、新宿は通ってくることになりますね。

堀口 そうですね。西のほうから引っ張ってきますので。

堀口 こちらは『江戸名所図会』の「淀橋水車(よどばしみずぐるま)」という1枚です。

―― 淀橋というと、新宿の有名なCMの歌もございますが。

堀口 駅前にもありますけれども(笑)。あの辺りということですが、左下の手前側に、水車小屋があるのがおわかりいただけますでしょうか。

―― はい。

堀口 この風景が、京都の淀城の辺りを流れる淀川の雰囲気に似ているということで、淀橋と呼ばれたのです。

―― なるほど。

堀口 橋がかかっている水路がありますけれども、これが、神田上水です。

―― なるほど。意外と東京は、西のほうの由来の、何々に似ているからこの名前だというのが、そこここにあったりしますね。

堀口 やはり上方への憧れというのがあるのですよね。

―― この時代ですとあるのでしょうね。

堀口 この神田上水というのは、三鷹の井之頭池を水源にしている上水ですが、この辺りは、その水の力を利用した水車でお米や麦をつく、ということが行われておりました。非常に牧歌的な雰囲気が人気の、江戸近郊の水辺の観光地というイメージです。

―― この絵を見ていても、その雰囲気が非常に伝わってくるというか、今の新宿とは思えないです。

堀口 本当にそうですよね。

―― ええ。のどかな風景が広がっています。

堀口 はい。江戸時代の新宿というと、水との縁が非常に深い場所だったのだということがわかりますよね。

―― はい。


●巨大な池が人気を呼んだ熊野十二社


堀口 玉川上水、神田上水という上水道もそうですし、こちらは「角筈村 熊野十二所権現社(つのはずむら くまのじゅうにしょごんげんのやしろ)」という1枚ですけど、これも、真ん中やや左側寄りにお社が描かれているのです。手前にはドーンと巨大なスペ...
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