近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
伊藤博文は大日本帝国憲法の致命的な問題点に気づいていた
第2話へ進む
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
日本の「組織」は、どうして失敗してしまうのか。その教訓は、歴史をひもとけば山ほど出てくる。たとえば、戦前日本の「無任所大臣」のあり方や「戦時中の省庁再編」を見れば、日本の組織改革がなぜ失敗するのかが、痛いほどよくわかる。教科書では教えない失敗事例を徹底解説し、失敗しないための知恵を導き出す講義シリーズ。第一話では、いま設けられている様々な「特命担当大臣」が果たして本当に機能しているのかをひも解くために、日本政治における戦前の「無任所大臣」の歴史を見ていく。(全9話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分40秒
収録日:2021年5月31日
追加日:2021年8月4日
≪全文≫

●大臣制度ができた当初からあった「無任所大臣」


―― 皆さま、こんにちは。本日は片山杜秀先生に「近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質」というテーマでお話をいただきます。その中でも、特に東條英機内閣の失敗とその教訓、また現代の省庁再編ならびに担当大臣について、お話しいただく予定です。よろしくお願いいたします。

片山 よろしくお願いいたします。

―― このテーマについては、以前、雑談の中で片山先生に「現在のコロナ禍において、新型コロナウイルス感染症対策担当大臣やワクチン接種担当大臣が設けられましたが、これは機能しているのでしょうか」とお訊きしたら、「実はこれについては、東條(英機)内閣、ないしはその直前の近衛(文麿)第2次内閣くらいからの「無任所大臣」と比べると、その理想と実態が非常によく分かる」ということでした。それは大変興味深い視点なので、ぜひ講義をお願いしたいということで、ご依頼した形です。

片山 うまくお話しできればいいのですが。

―― 今挙げた担当大臣について、本来は厚生労働大臣がいるので、その方が就いたらいいのではないか、などいろいろな発想があると思います。しかし、やはり重要な問題だから、あえて担当大臣を設けたわけですね。

 歴史をさかのぼると、第2次世界大戦前の時期に、日本において新体制運動が起こり、国の仕組みに変えていこうとする中で、無任所大臣というものが出てきました。この無任所大臣登場の経緯は、どういったものだったのでしょうか。

片山 無任所大臣は一応、内閣の大臣制度ができた当初からありました。特定の役所には、その官庁を所管する大蔵大臣や外務大臣といったものがいます。また、そういった特定の役所の大臣ではないのだけれども、例えば枢密院議長などは閣僚と同等に扱い、(全員ではないけれども)時として大臣として数えていました。

 特定の官庁ではありませんが、いってみれば監察権を行使して、「総理大臣の行っていることはおかしいのではないか」などと物言いを付けたりするのが、枢密院の機能です。その枢密院は、行政の中にある機構で、内閣と別立てになっているものです。だから、その議長は、やはり大臣扱いしないと、行政の中での居場所が不安定となる。

 ということで、枢密院の議長は、無任所大臣の扱いで国務大臣の1人として数える。習慣ではありませんが、時折そうな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏