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平成時代の選挙制度改革と省庁再編は本当に機能したのか

民主主義と政治(3)平成の二大改革とその評価

情報・テキスト
平成時代には、選挙制度改革と省庁再編という、2つの大きな改革が行われた。曽根泰教氏が、独自の視点からこれらの改革に評価を下す。まず省庁再編に関して、ただ組織を合併したのみで、機能の見直しと再編が不十分である点を指摘し、その実際上の目的が果たされていないと断じる。他方で、選挙制度改革に関しては、旧制度の中選挙区制が抱えるさまざまな民主主義の実現に関わる問題点を指摘し、その改革の必然性を説く。(全8話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:11:02
収録日:2019/08/28
追加日:2019/09/21
≪全文≫

●省庁再編はその目的を見誤っていた


―― 先生、お聞きしたいんですが、日本って基本的には「これも良いけど、これも良いな」という両義性の国ですよね。そう考えると、中選挙区の制度はやはりよくできていると感じます。同じ党から、5人区なら5人出ても3人くらい通ればいい。15パーセント程度の得票率があれば、それで当選できる。かつ、それぞれに派閥のボスがいる。派閥のボスは、人間学でいうところの相当の達人でないとボスになれませんから、妥協にしても、ある程度の貸し借り、面倒見という形でしやすい。

 小選挙区改革の時は、イギリス型が絶対に正しいという感じで行われましたが、結果的に小選挙区になると政治家を育てるための道場がないですよね。道場主もいません。基本的に「勝手にやって下さい」という風潮です。小選挙区に変わったことで、「代議士」と呼ばれたり「先生」と呼ばれたりした時代と比べると、政治家自体も、あるいは衆議院議員もあまりリスペクトされなくなりました。区議会議員と都議会議員と区長と同じ選挙区だったら、衆議院議員が偉いという話にもならなくなりましたよね。

 古いモデルを捨てて新しいモデルを持ってきたけど、今のところあまり機能していないという意味で、相当難しい状況ではないかと思います。同時に、霞が関が再編されました。例えば、自治庁と郵政省を合同してどうするんだ、と思われますが、かなり無理をして省の数を減らしてきました。あれも結果的に機能しなくなりました

 政治はやはり戦争と違うから、ある種の妥協をいかにうまくやるかという点がかなりポイントになると思います。そのような意味で、今の日本の政治はどこにも手本がなくなって、かつ、もともとあったものも捨ててしまって、相当しんどい状況なのかなと思うのですが。

曽根 選挙制度改革と省庁再編という2つの大きな改革が平成時代に行われました。省庁の方から申し上げると、省庁再編は本当に機能したのか。私は最初から言っていますが、これは企業合併と同じで、大規模省庁を作った合併であって再編ではないのです。

 つまり、数を減らすということは何なのかというと、大規模省庁ができるということですよね。数は減ったんだけれども、機能再編がない。機能再編とは、例えばどういうことか。当時、橋本行革の時に私が批判したのは、情報化に対応できていないのではないかということでした。郵政省と通産省の機械情報局を合併再編して次の時代の情報化の役所を作るんだったらいいんだけれど、それができていないね、と。

 それから、高齢化・少子化が目前なんだから、厚労省はどのようにしていくのか。現在、予算の半分は厚労省が使っているわけですよね。だから、この役所をどう組み立てるかというのは、実は機能再編の中心部分なんですよね。

 それが実は機能再編ではなかった。私自身はこれを合併だと思っています。日本の企業合併と同じで、大規模企業合併はうまくいっていない例が多い。つまり、たすき掛け人事を20年に渡ってやるとかね。それは「再編成じゃないよ」というわけです。本来、合併に際しては相乗効果が生まれるように組織を再編するということで、その理念と新しい仕組みをちゃんと制度化しなければいけない。それが抜けていたと思うんですね。


●内閣機能の強化という改革は薬が効きすぎた


曽根 ただし、省庁再編の時に大規模省庁の方は無理でしたが、内閣機能の強化は経済財政諮問会議をはじめとしていくつかできました。経済財政諮問会議は、小泉(純一郎)首相の時に竹中(平蔵)さんを大臣にしましたが、あの頃は機能していたわけですね。だから人に依存するシステムなんです。

―― 確かにそうですね。

曽根 それを持続的にワーク(機能)するシステムにするにはどうしたら良いか。民主党政権になって、これをなんとかしようとしましたが、法案は通らなかった。ということで、まだ課題がかなり残っているわけですね。

 だから、省庁再編は、テンミニッツTVの中で内閣人事局の話もしましたけれど、内閣人事局を含めて、そこはいったい何が起こっているのか。そこには巨大化した内閣府であり、内閣官房ですね。だから、内閣官房をどう整理しなければいけないのか。内閣人事局をどう位置付けるのか。

 ただ、首相、内閣のリーダーシップが強化されるのは確かです。しかし、これは薬が効きすぎた。効きすぎた薬はどこに副作用があるのか。副反応はどこにあるのか。それをチェックする時期だというのが1つですね。


●中選挙区制が抱える問題と実態


曽根 それから選挙の方です。私はもともと中選挙区を研究していましたが、中選挙区はどこの制度に由来するのか。例えば外国に事例があるのかというと、これに関しては、あるともいえますが、証拠はありません。アイルランドに...
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