●省庁再編はその目的を見誤っていた
―― 先生、お聞きしたいんですが、日本って基本的には「これも良いけど、これも良いな」という両義性の国ですよね。そう考えると、中選挙区の制度はやはりよくできていると感じます。同じ党から、5人区なら5人出ても3人くらい通ればいい。15パーセント程度の得票率があれば、それで当選できる。かつ、それぞれに派閥のボスがいる。派閥のボスは、人間学でいうところの相当の達人でないとボスになれませんから、妥協にしても、ある程度の貸し借り、面倒見という形でしやすい。
小選挙区改革の時は、イギリス型が絶対に正しいという感じで行われましたが、結果的に小選挙区になると政治家を育てるための道場がないですよね。道場主もいません。基本的に「勝手にやって下さい」という風潮です。小選挙区に変わったことで、「代議士」と呼ばれたり「先生」と呼ばれたりした時代と比べると、政治家自体も、あるいは衆議院議員もあまりリスペクトされなくなりました。区議会議員と都議会議員と区長と同じ選挙区だったら、衆議院議員が偉いという話にもならなくなりましたよね。
古いモデルを捨てて新しいモデルを持ってきたけど、今のところあまり機能していないという意味で、相当難しい状況ではないかと思います。同時に、霞が関が再編されました。例えば、自治庁と郵政省を合同してどうするんだ、と思われますが、かなり無理をして省の数を減らしてきました。あれも結果的に機能しなくなりました
政治はやはり戦争と違うから、ある種の妥協をいかにうまくやるかという点がかなりポイントになると思います。そのような意味で、今の日本の政治はどこにも手本がなくなって、かつ、もともとあったものも捨ててしまって、相当しんどい状況なのかなと思うのですが。
曽根 選挙制度改革と省庁再編という2つの大きな改革が平成時代に行われました。省庁の方から申し上げると、省庁再編は本当に機能したのか。私は最初から言っていますが、これは企業合併と同じで、大規模省庁を作った合併であって再編ではないのです。
つまり、数を減らすということは何なのかというと、大規模省庁ができるということですよね。数は減ったんだけれども、機能再編がない。機能再編とは、例えばどういうことか。当時、橋本行革の時に私が批判したのは、情報化に対応できていないのではないかということで...