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日本では政党マネジメントは企業経営よりはるかに難しい

民主主義と政治(7)政党マネジメントの難しさ

情報・テキスト
政党という組織は、各人が当選したという自負を持つ同列の人間たちをまとめなければならないために、企業よりもはるかにマネジメントが難しい。シニョリティールールは1つの方策ともいえるが、有能な政治家を選抜する仕組みも考えていく必要がある、と曽根泰教氏は指摘する。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:07:28
収録日:2019/08/28
追加日:2019/10/05
キーワード:
≪全文≫

●日本において政党のマネジメントほど難しいものはない


―― 先生から前に教えて頂きましたが、日本において政党のマネジメントほど難しいものはないと。法人格もよく分からない。このマネジメントが一番難しい、と。

曽根 難しいですね。個々の政治家に関しては、自分が一国一城の主だと思っているのですよね。上司はいるような、いないような。そして、党という組織があるような、ないような。会社でいえば、社長がいて、管理職がいて、その下に社員がいて、上から下に命令が通るというものではありません。

 だから、具体的に党の決定に基づいた指令をどのように通すのか、どのように党の合意をまとめるか、といった点で、組織図は書いてありますが、実態となるとなかなか難しいですよ。それでなくても人の言う事を聞かないエゴの強い人ばかりですから。学者もそういうところがありますが。企業経営者は政党のことを少し蔑んで言うのですが、企業経営者でいえば経営の方がずっと楽なのですね。政党法を作りさえすれば済む問題ではない。

―― そうでしょうね。

曽根 われわれは、よく企業経営者に「株主総会、大変でしょう」と聞きます。「はい」と答える人には、「国会は毎日株主総会を行っているようなものだ」と伝えるのです。


●シニョリティルールだけでは良い議員を選抜することができない


―― おっしゃる通りですよね。年収など議員報酬も全員同じ、議員の部屋も宿舎も同じ。それは当選回数に関係なく同じだとなると、束ねていくのは非常に難しいですよね。

曽根 これについて、アメリカ、イギリスなどでは当選回数に基づいたシニョリティーシステムが1つあるわけですね。もう1つ、これも答えるのが難しいのですが、日本でよく聞かれたこととして、大臣や首相を務めた人を含めた高齢者議員をどう扱うのかという問題です。「イギリスの例を教えて下さい」と聞かれた時に、「イギリスには高齢者はいません」と、ジョークで答えたのですが、確かに難しい。

―― 難しいですよね。

曽根 当選回数が多い方がやはり発言権がある。アメリカもそうですが、これも1つの慣行ですね。だけど、議員に関していえば、有権者が候補者を選び取るのもそうですが、一度当選した人、一回生、二回生、三回生を見て選別、抜擢するのはわれわれの仕事なのですね。良い議員をきちんと「良い」と言ってあげなければいけない。

 本来であれば、政党が彼らを評価して、良い人間を取り立てる。取り立てるというのは、大臣などの要職に就けるという意味ではなく、もっと鍛えてチャンスを与えるということです。評論家や学者も、きちんと勉強をしている議員を評価してあげなければいけない。

―― でも、政党という中にその機能を持っていないですよね。

曽根 持っていないですね。


●政治に携わる人間に必要なのは各分野の正しい情報源を掴む能力


―― 戦前であれば、原敬の時代の立憲政友会は機能していました。しかし、高橋是清に代わった瞬間にマネジメントフォローの役割に変わった。そうした政党の役割は、現在まで相変わらず続いていますよね。

曽根 「どのような人が政策秘書にふさわしいですか」と非常に有能な政治家に聞いたことがあります。例えば、社会保障の政策領域で少し話を聞いてみようということになったら、その分野に明るい人を5人挙げられる政策秘書が必要なのではないですか、と尋ねたのです。すると、「それはそうだ。だけどそれは政治家にも必要だ」という回答がありました。

 つまり、原子力、文化、外交、安全保障といったあらゆる分野に通暁することはできないですよね。だけど、ある領域で個人の勉強会や部会に呼ぶなどして、話を聞いてみようということになったとする。それぞれの党にはそれぞれの傾向がありますが、3人や5人のその分野の1級の人の名前を挙げることは可能ですよ。パッパッパッとひらめいてそうした名前が言える人は、実は重要なのですよ。

―― そうでしょうね。分かっているわけですからね。

曽根 だけどそれがひらめくっていうのは、実は役人、ジャーナリスト、学者、皆共通に必要なんですよ。

 そのためには、相当勉強する必要があるのです。具体的に名前を挙げると、石破茂さんが政調会長を務めていた時に、彼の部屋を訪ねました。農業、安全保障、社会保障などに関連する本が各30冊程度積んであるのですね。それぞれ勉強しているのです。本当にきちんと本を読んでいるのかと思って、念押しで聞いてみると、「あの人の農業政策は面白いが自民党としては極端だ。こちらの先生はバランスの取れた議論だ」などと要所を押さえている。

 やはり、政党は政党なりに勉強しておいてほしい。学者は学者なりに勉強しますが、だけど、有力な情報源はどこかという点は勉強する必要がある。あ...
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