●台湾をめぐる米中対立と日本の対応
皆さん、こんにちは、島田晴雄です。
今日は皆さんと台湾有事を考えるというテーマで、ご一緒に考えたいと思います。台湾有事が最近、非常に関心を集めています。政府は2022年の秋から台湾有事を念頭に、防衛力の強化をめぐって政策討議を続けてきました。とりわけ反撃能力の保有による抑止力の強化と、防衛予算の大幅増の内容と財源に関心が注がれていました。習近平政権は、台湾問題は中国の「核心的利益」の核心だと言い切っているわけです。
アメリカのバイデン政権は、「一つの中国」の原則は認めるけれども、台湾の現状を一方的に変えることは許さない。米中関係は台湾問題をめぐって、とりわけ最近対立を深めているわけです。習近平主席は、台湾併合による祖国の統一は中国の「核心的利益」の核心であり、平和的統一を目指すけれども、武力行使の選択肢は排除しない。このように言っています。
バイデン大統領は、中国が台湾に武力侵攻するなら、軍事的介入も辞さないと、繰り返し言っています。習近平氏は、台湾併合による祖国統一は中国共産党の歴史的任務であり、とりわけ第3期に入った習近平政権にとって、歴史的レガシーとして、ぜひとも実現したいところだと考えていると思います。また、台湾を手に入れることができると太平洋への出口を確保することになるので、太平洋の制海権を握るための要件なのです。
アメリカにとって台湾の現状を維持することは、シーレーンを確保することでもあります。また、アメリカは世界の民主主義の盟主ということを任じているわけで、中国の圧力の下でも民主主義を志向して頑張っている台湾を見捨てることはできない。もし台湾の現状を守りきれなければ、アメリカは信用を失って、その権威は失墜するだろうということです。日本はアメリカの軍事同盟国ですから、台湾海峡の平和と安定を守るためにアメリカに協力して、そのために日本の防衛力の格段の強化を約束しているわけです。
台湾をめぐる米中対立の中でも、もし台湾を武力で争奪するような有事が起これば、日本は日米同盟に基づいて米軍の支援をすることになって、日本の国土、経済、社会などを巻き込む有事に引き込まれるわけです。したがって、台湾有事はすなわち日本有事であって、ロシアの侵略を受けたウクライナの例を見ても分かるように、国土、経済、社会などに甚大な損害を被ることがあり得るのです。
そうした被害を事前に防ぐには、われわれは一体、何をしておけばいいのか。もちろん、台湾有事のような事態はないことが望ましいし、有事のような事態を防ぐために最大の努力をすべきだと思いますが、しかし、有事は可能性としてはあり得るのです。その場合の最悪の事態を想定して、被害を最小にするには何をすればいいのか。今は何をしておけばいいのかということを考えることは、政府や企業や国民自身にとっても非常に重要なことです。
以下では、われわれはそういうことを想像しながら、何をすべきなのかということを皆さんと一緒に考えたいと思います。
●第3期に突入した習近平独裁政権の野望
2021年の7月1日、これは共産党創立100周年なのですが、小雨がずっと降り続いていたのです。天安門広場で7万人の党員が埋め尽くしていました。指導者が演説する人民大会堂ではなくて、天安門の楼上、しかも終身主席(終身皇帝)を意識している習近平氏が、ただ1人グレーの人民服という、天安門に飾られた毛沢東の肖像と同じ姿で約1時間演説を行ったのです。
台湾問題について、「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは中国共産党の変わらぬ歴史的任務である。いかなる台湾独立の企みも断固として粉砕する。民族復興の未来を創造するのだ」と、このような内容のことを言ったわけです。
また、2022年の10月16日、共産党大会で40分ばかり報告をしたのですが、その中でも「台湾問題の解決は中国人自身のことであり、中国人自身が決めるべきだ。平和統一の未来を実現しようとはしているが、決して武力行使の放棄は約束しない。あらゆる必要な措置を取るという選択肢は残しておく」と、このようなことを言っています。
また、2022年の11月14日に米中首脳会談がバリ島で、11月17日には日中首脳会談がバンコクで行われましたが、そこでも同様のことを言っているわけです。習近平氏はこの2年ほど、重要な場面で、台湾問題について必ず発言をして、だんだんトーンを高めています。台湾併合による祖国統一は中国の「核心的利益」であり、それは中国人自身が決めることだ。外部からの干渉を許さない。平和統一を目指すが、必要な場合、武力行使は放棄しない。そういう主張はずっと一貫しています。
習近平氏がこのように言う、台湾併合の戦略的な狙いは何か。いくつか...