●2つに分かれる世界の半導体分布
それでまず、世界の半導体産業の鳥瞰図ということを考えてみたいと思います。
世界の半導体は、鳥瞰図といってもなかなか分かりにくいのですけれども、ここに主な技術やチップ(に関する分野)が並んでいます。まず(半導体)チップというのは2センチ角くらいの小さなもので、さらに、設計ソフト、要素回路ライセンスというものがあり、半導体を作る装置、(次の)ファウンドリーは下請けです。それから、製造するときの後工程、そして(最後の)ウェハーというのはLPレコードみたいな薄いもので、その上に光を当てて半導体を作っていくのです。
このような分野があって、アメリカ、台湾、欧州、日本、中国、韓国を並べてみると、何やらパーセンテージでアメリカがすごく大きいのです。これはどうしてなのかというと、すぐには分からないのですが、これには二重計算、三重計算が入っているので、とにかくこのように表すとアメリカが多いだけです。中国がすごく少ないというのは正当ではないのですが、ただ、そのような分布になっているわけです。
これだけを見ると分かりにくいので、ここで世界の半導体の分布を知るためには、どのように理解したらいいのかということを説明します。
そこで、このように考えたら分かりやすいと思います。今の世界の半導体はファブレス(fabless)といって、ファブというのは工場ですが、工場のない半導体メーカーと、ファウンドリー(foundry)という委託生産業者、つまり下請けですが、この2つに分かれています。
ファブレスというのは何かというと、設計をしたり、設計のライセンスをやったり、製造方法を考えたり、要するに頭脳です。工場を持たないので投資のコストがあまりなく、すごく効率がいいのです。ものすごく価値が高いものを頭の中で作りますので儲かるのです。この中心はアメリカです。アメリカは今、ファブレスの半導体メーカーが中小企業も含めて1000ぐらいあるといわれています。
それから、ファウンドリーというのは何かというと、これは台湾のTSMCという会社が何十年か前に始めたのですが、ファブレスの企業が「こういう半導体を作ってほしい」と設計して渡すと、その通りに作るところです。しかも最先端のものを作ります。これが世界に何百とあるわけで、非常に大きな工場を造るのに何兆円もかけているところもありますが、その2つに大別できるのです。
では、なぜそうなのかというと、ファブレスが頭脳でモノを作り、ファウンドリーが受託生産、つまり手(手動)で作るという、この両方が分業と協業ですごくいい循環をしているのです。まず、世界の半導体のメーカーはそういう構造になっているということをご理解いただきたいと思います。
●米中対立がすごい!アメリカが危機意識を強めた中国の台頭
もう1つは何かというと、実は米中対立がすごいことになっているのです。ファブレスといいましたけれども、1980年代までアメリカはファブレスではなく、工場を持って作っていたのです。ところが、だんだん工場を持たずに頭脳だけで作って、(生産は)下請けにやらせようとします。
そこで台湾が手を挙げてくれたので任せるのですが、韓国もサムソンとかがそうです。要するに、グローバリゼーションが進んでいたので、アメリカは世界中にネットワークを張って、モノはそれらの国に作らせ、自分たちは頭脳ということになり、頭脳だから利益は高いという構造で分業していたわけです。
そのようなことで、わが世の春を謳歌していたわけですが、そこに中国が台頭してきたのです。中国は人口も多いし、ものすごい半導体の市場で世界最大です。
ところが、中国が台頭してくると、最先端の半導体も自分である程度作れるようになり始めたのです。これを見てアメリカは、ものすごく危ないと気がつきます。今、サプライチェーン、サプライチェーンといっていますが、実はアメリカは半導体を自国内ではあまり作れないので、世界中に作らせています。世界中に作らせるものですから、その結果みなアメリカの所有になって、(資料にあるように)51パーセントという過大評価になっているのです。つまり、世界から吸い上げているわけです。
そこに中国の台頭ともう1つ、2022年からロシアのウクライナ侵略が始まりました。そうするとモノが不足します。結局、波及効果があって、究極的には半導体を誰が持つかということになってくる。これは大変だということで、そういう世の中になって、もし有事、戦争が始まると、アメリカはサプライチェーンの一番重要なところを全然持っていませんから、止まってしまうわけです。
それに気がついて、2022年の夏に、バイデン大統領は今まで歴史上なかったようなとん...