半導体から見る明日の世界
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
半導体世界でさらに熾烈になっている米中対立とその背景
半導体から見る明日の世界(3)米中対立と欧州企業の支配
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
中国の台頭によって急激に拡大した半導体市場。急追する中国の脅威が増す中、アメリカで浮き彫りになったのはサプライチェーンの空洞化である。これは危機だということでバイデン政権が動き出す一方、注視すべきは設計と微細加工を支配する欧州企業の存在だ。そこで今回は、米中対立で深まる半導体の世界と、設計力の頂点に立つイギリスのArmと微細加工で世界を支配するオランダのASLMという欧州2社について解説を進める。(全12話中第3話)
時間:9分28秒
収録日:2023年7月14日
追加日:2023年9月11日
≪全文≫

●米中対立で浮き彫りになったサプライチェーンの空洞化


 さて、今までのストーリーは、最初に申し上げたファブレスとファウンドリーの分業と協業の話です。世界はそのようになっています。もう1つの話は米中対立です。

 中国は21世紀に入ってから、半導体の市場がものすごい勢いで拡大したのです。2012年に習近平さんが主席になったわけですが、それまでの経済の成長というのは鄧小平さんが主導したものです。それが、習近平さんが主席になり世界最大の半導体市場になったのですけれども、半導体の自給率が非常に低いというのが構造的な欠点でした。

 なぜかというと、中国は後発国だからです。鄧小平さんが頑張り始めた時は、世界におけるGDPの比率は3パーセントもなかったのです。その後10年のうちに3倍になり、一応形だけは大国になったわけです。しかし、中身がありません。それで半導体(の自給率)が非常に低い。習近平さんはそれに気がついて、2014年に「国家IC産業発展推進ガイドライン」というものを作り、そのあとに中国IC(投資)ファンド(基金のこと。National IC Industry Investment Fund、通称:National Big Fund)を作ったのです。それを使って半導体産業を発展させようとします。

 そして2015年に「中国製造2025」を作り、アメリカにものすごく叩かれましたが、これをやりました。これは何かというと、2020年に半導体の自給率を40パーセント、25年に70パーセント、その後に100パーセントにしていくという目標です。それで、ものすごく頑張り始めたわけです。

 この習近平さんが作ったファンドですが、清華大学に1つその基礎をどんと置いたのです。そして、清華大学のファンドを使うのですが、清華大学は優秀な学生が集まっていますから、彼らを使った「紫光(しこう)集団」がお金の力で世界中のメーカーを買い漁ったのです。

 しかし、結局あまりにも乱暴なことをしたので挫折しますが、であればそのお金を使ってこのような工場を造ろうということになり、ものすごい勢いで工場を造り始めたのです。ということで、世界の全工場を造るより中国の工場建築のほうが多かった時代がありました。

 さらに、工場を造ると半導体の製造装置を作らなければいけないので、それもどんどん作り、今ガラ(形)だけは中国が世界一です。ところが、最先端(の半導体)がない。一番重要なものがないわけで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
政治学講座~選挙をどう見るべきか(1)選挙の意味
選挙と政治権力…「選挙に勝つ」とはどういうことか?
曽根泰教
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将