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ラピダスに注目、最先端半導体の国産化へ日本企業の挑戦

半導体から見る明日の世界(10)半導体立国をめざす日本企業の挑戦

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
概要・テキスト
日進月歩の進化を遂げている半導体技術。現在の最先端半導体は3ナノの世界だということで、世界的企業である台湾の「TSMC」はあと1~2年のうちに2ナノに到達すると見られている。日本は2021年に同社を誘致したが、同時に半導体立国を目指すため新たな動きも始まっており、2022年、2ナノの半導体国産化をめざす企業が産声を上げた。それが、トヨタ、NTT、ソニーなど8社が出資して設立された「ラピダス(Rapidus)」である。今回はこの企業に焦点を当てて解説しながら、世界をリードする日本の半導体関連産業について話を進めていく。(全12話中第10話)
時間:11:14
収録日:2023/07/14
追加日:2023/10/30
キーワード:
≪全文≫

●最先端の半導体の国産化に挑む「ラピダス」


 もう1つ大きな話は「ラピダス(Rapidus)」という会社です。2022年11月10日にこの会社が政府の支援を得て半導体を作ることになりました。ラピダスというのはラテン語で「速い」という意味だそうですが、これには8社の日本の会社――トヨタ、NTT、ソニー、NEC、ソフトバンク、デンソー、キオクシア、三菱(UFJ)銀行――が参加します。これを主導した東京エレクトロン元社長の東哲郎さんは大変な国際派の人ですが、積極的に声をかけて始めたのです。

 この会社は何をするのかというと、「ビヨンド2ナノ」という(2ナノは最先端中の最先端ですが)そのロジック半導体の製造技術を確立して、2020年代後半、2027年が目標になっているようですけれども、製造ラインの構築を目指すということです。そこで経産省は早速補正予算を組み、直ちに700億円支援しています。

 それで小池淳義さんという人がラピダスの社長になりましたが、日立にいた人で製造の専門家です。この方が次のようなことを言っています。2025年までに試作ラインを構築し、2027年と思われていますが量産ラインを立ち上げるということです。今から数年です。それで技術の確立まで2兆円が必要で、量産ラインの準備に5兆円ぐらいかかると記者会見で話しました。

 それで、どのようにしたらできるのかというと、2022年の末に提携したIBMは、2021年に2ナノ品の試作に成功しました。IBMは今、半導体を作っていません。試作は本当の実験だと思います。これを量産するのはすごく大変なことで、TSMCはこれを作るのに100万枚ロスしているといわれるくらい、何年もかかっているわけです。たまたまIBMはそれで成功しただけで、実験で成功するのと作るのとでは話が違うのです。

 ラピダスは、IBMに社員を派遣して教育するから大丈夫だと言っているわけです。そして経産省は直ちに、2カ月後に2600億円の補助を発表しています。ですから、前の700億円と合わせて3300億円になったということです。

 また、小池さんはインタビューで次のように答えています。「一般に最先端の半導体を量産するには1000人ぐらい技術者が必要だといわれているが、AIとか自動化技術を導入するから500人でできる」と。このように言っていますが、2027年から量産を開始して、2030年には売り上げを1兆円にするそうです。

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