世界を混乱させるトランプ関税攻勢の狙い
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
真のねらいは別に?…トランプ大統領は何で儲けるのか
世界を混乱させるトランプ関税攻勢の狙い(3)トランプ関税攻勢の真のねらいは
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
トランプ大統領は、経済的な利益にはめざとい人物である。実は、今、唱えている関税政策は「本丸」ではないのかもしれない。トランプ大統領の言動を見ていくと、真のねらいが見えてくる。アメリカのビッグテック企業からの巨大な収入、宇宙開発や宇宙通信での指導権、同盟国や同志国への高価な軍需品の販売……。はたして、これから世界経済に何が起きていくのだろうか。(全4話中第3話)

※この講義は緊急配信のため、講義テキストとしてレジュメを添付します。講義内容と一部異同もありますので、ご了承ください。
時間:14分06秒
収録日:2025年4月4日
追加日:2025年4月12日
≪全文≫
Ⅵ. トランプ関税攻勢の真のねらいは

・これまで米国に大きく依存してきた国々、企業は米国を回避するルートを志向。
 ⇒世界の貿易、投資構造の多様化。・サプライチェーンの多様化、複雑化。

・トランプ氏は直観力が鋭い人物なので、彼が唱える関税戦略の真のねらいは、どうやら別のところにあるかもしれません。高い関税を世界にかけて、インフレが昂進し、消費と生産が減少し、成長が鈍化して、世界経済が分裂しても、そんなことは彼にとってはどうでも良いことかもしれません。

・トランプ氏の言動を見ているといくつかつながっている事象があります。ひとつはバイデン政権時代に Janet Yellen 財務長官らが主導して、GAFAMなどアメリカの巨大テック企業が事業所のない国や地域でも高額なサービス料金を獲得できた税制の国際的仕組みを改革し、厳格な国際課税制度を整備したことがありましたが、トランプ氏はこの新たな国際課税制度を廃止しました。唐鎌大輔氏は日本の近年の円安現象の根底に、彼が「デジタル赤字」と名づけるGAFAMなどの企業への莫大なサービス料支払いの存在を指摘しています(唐鎌著『弱い円の正体:仮面の黒字国:日本』日経プレミアシリーズ2024)。トランプ氏は米国の巨大テック企業の莫大なサービス料収入構造を制度化しようとしています。

・いまひとつは宇宙通信と宇宙開発です。通信が宇宙に広く拡大している現在、たとえば、イーロン・マスク氏が開発したStarlinkはすでに2万基以上の通信衛星で宇宙空間をカバーし、地上波が届かなかった地域に宇宙通信の恩恵をとどけています。この通信ネットワークはますます高密度に展開しつつあります。

・欧州ではウクライナ戦争が長期化し、ロシアの脅威が高まりつつあるので、NATO諸国は懸命に軍事費を増額して軍備を強化しようとしています。しかし、プーチン氏を信頼して停戦協議に持ち込もうとしているトランプ氏は、英仏など欧州主要国が構想する停戦後の「平和維持軍」への米軍の参加や介在には否定的です。

・また、日本の防衛力ならびに防衛予算に関するトランプ氏の側近とトランプ氏自身の発言も重要です。トランプ氏の側近は、日本は防衛費を今のGDP比2%から3%に引き上げるべきと主張しました。日本は岸田内閣の時代に1%から2%への引き上げを約束しましたが、まだ予算措置が具体化していません。また、日本は長距離ミサイルの開発...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ