トランプ2.0と中東
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
米国史で最も「主権主義者」を体現しているのはトランプか
トランプ2.0と中東(2)保守主義者から主権主義者へ
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
トランプ2.0の政治手法や姿勢からは、支持者が信じる保守主義の影が薄れている。「自国第一主義」を守るためなら、桁外れの関税も議事堂襲撃も恐れない。むしろ大国仲間としてロシアに接近する風すらうかがえる。見えてくるのは国際機関や多国間協定への拒否反応、すなわち「主権主義者」の姿なのである。(全4話中第2話)
時間:9分52秒
収録日:2025年4月10日
追加日:2025年6月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●現代のトランプを彷彿させるアルキビアデスの政治手法


 前回は、古典古代ギリシアの歴史を扱った名作であるプルタルコスの『英雄伝』、いわゆる「対比列伝」に紹介されていたアルキビアデスのエピソードで終わりました。

 アルキビアデスは、なかなか大きな戦略構想を持つことができた人物であり、最終的にスパルタを倒し、アケメネス朝ペルシアを牽制していくためのグランドデザインとして、地中海をどう抑えていくかという発想も持っていた人物です。

 彼自身はカルタゴ(現在のチュニジア~リビア)を抑えることを夢見ていましたし、シチリアに出兵して戦争したこともあります。そうした余勢をかって、イタリア半島とペロポネソス半島(スパルタを中心とする同盟国)の国々を包囲する、スケールの大きな戦略を考えたこともあります。

 アルキビアデスのこうした政治手法について、歴史家としてペロポネソス戦争を描いたトゥキュディデスは、「何でもござれのならず者風」といった表現を使ったことがあります。あるいは「俺が、俺が」「俺が、俺が」と対抗意識をむき出しにするといったような…という、やや強い表現を使ってアルキビアデスを揶揄したことがあります。

 そういたしますと、このアルキビアデスの姿は、その政治手法や政治姿勢、あるいは自己顕示欲などを見るにつけて、どこか現代のトランプ氏を彷彿させるところがあります。


●大胆な革新や革命を恐れないトランプは保守か


 そのように見ていくと、トランプ氏は非常に正統的な保守主義者とはいえないのではないかという気がしてきます。

 むしろ、中国に104パーセント──その後もっと増えて120パーセントを超えるような関税をかけるなどというような姿勢は、(どうでしょうか)。

 通常、危険な行為によって大きな事態や何が起きるか分からないようなことは避けるのが正統的な保守主義者です。その点からして、トランプ氏の評価は分かれるところです。ともあれ、彼が大胆な、むしろ革新的な政治家として、大胆な革命というものを拒否しない人物である(とはいえるでしょう)。

 通常、左派や左翼の独擅場であるところの革新や革命というものを、むしろ彼は右寄りの保守主義の立場から、新たな試みとしての政治革新、革命的行為を拒否しない政治家だということがいえるでしょう。


●保守にも民主主義にもなじまないトランプ氏...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か――著書のあとがきに込めたメッセージ
小原雅博
政治学講座~選挙をどう見るべきか(1)選挙の意味
選挙と政治権力…「選挙に勝つ」とはどういうことか?
曽根泰教
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(2)ヒトの子育てと脳の関係
チンパンジーは乱婚、ヒトは夫婦…人間の特殊性と複雑性
長谷川眞理子
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(6)夜勤問題と仮眠対策
2交代制と3交代制、どちらが問題?…有効な夜勤対策は
西多昌規
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か――著書のあとがきに込めたメッセージ
小原雅博
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
天下人・織田信長の実像に迫る(2)足利幕府と天下再興
「天下再興」に向けた足利義昭の呼びかけに応じた織田信長
柴裕之
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
「アカデメイア」から考える学びの意義(4)学びの3つのキーワード
より良い人生への学び…開かれた知、批判の精神、学ぶ主体
納富信留
『江戸名所図会』で歩く東京~両国(3)回向院を訪ねる
相撲から供養まで「聖俗表裏一体」な両国回向院の歴史
堀口茉純
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀