●主権主義者を通してみる「保守」の変容
皆さん、こんにちは。前回は主権主義者という言葉を紹介しましたが、この主権主義者という概念はフランス政治などでも用いられることがあります。
特に欧州統合(EUによる欧州の完全統合)に対して反対するか、あるいは憎悪を示すような流れです。すなわち、フランスの国民国家主権というものを重視する立場に立つ。
そうした観点から、例えばフランスの元社会党の幹部であり大統領選挙にも出たことのあるシュヴェンヌマン氏などが主権主義者の代表と目されることがあります。また最近では、ハンガリーのオルバン首相やイタリアのメローニ首相なども、ある面で主権主義者といえなくもないという解釈もあります。
いずれにしても、2010年代から2020年代に入り、かなりの民主主義社会において保守政党の変容、変化が始まったわけです。特に、トランプ氏のように、保守主義から出たけれど、その行動様式が著しく革新・革命的な非保守的な政治家による政党の急進化、あるいは政党の革命化という変容が始まったと指摘されています。
保守主義というのは、本来パレスチナ問題のような余りにも複雑すぎる問題には消極的であり、その解決に関しても多国間主義で問題に迫ろうとする傾向があります。あるいは、民衆暴動や株式の大暴落、為替変動の大変動など、何が起きるか分からないようなことには手を出しません。
つまり、関税率を激変させようという今回のトランプ大統領のような大きな政治的変革には手をつけない知恵。それが、保守主義のエドマンド・バーク以来の理想であり、知恵とされたものです。
●中東が引き継ぐ「保守」の知恵
この点は(感覚的・本能的にいうと)、むしろ中東の独裁者たちや軍人、政治家のほうが、複雑すぎる問題に手をつけるのは怖い、そうした問題には手をつけず、とにかく現状を維持していくようなことに終始する(傾向があります)。
その複雑な問題に手をつけたらどうなるか。うっかりすれば「アラブの春」になってしまう。また、うっかりするとそれどころではなく、シリアの独裁者アサドのような人物も倒されてしまう。あるいはイランであれだけ権力と力を持った革命防衛隊が、いともたやすくレバノンやシリアにおいて、その政治的な基盤を失ってしまう。イランの権威も失墜してしまう。
こうしたことをよく知っている...