トランプ2.0と中東
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ガザの悲劇…ハマスがいなくなることで起こる逆説
トランプ2.0と中東(4)ガザの悲劇と『マカーマート』
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ネタニヤフ首相による戦闘再開はイスラエル社会の分断を強化した。首相は自分の政治生命を延命するために住民たちの命を捨て駒として扱ったわけだが、ガザ住民は同様の仕打ちをハマスからも受けている。親子が生死を分けるさまは中世の古典『マカーマート』によってしか表せない、やるせない悲哀である。(全4話中第4話)
時間:9分59秒
収録日:2025年4月10日
追加日:2025年6月22日
カテゴリー:
≪全文≫

●ネタニヤフ首相が戦闘を再開した真意とは?


 皆さん、こんにちは。前回はガザの3段階にわたる停戦、そしてガザの復興へ向けたプログラムについて、おさらいを兼ねて紹介したところで終わりました。それが非常に順調に推移するかに見えたときに、ネタニヤフ首相はなぜ戦闘を再開したのかという問題ですが、これは基本的には彼が人質の救出よりもハマスの殲滅を優先したといわざるを得ないということです。

 ネタニヤフ氏のこうした政策や立場、姿勢は、当然イスラエル社会の分断を強めることになりました。人質の家族や友人、あるいは縁戚、親戚たちからすれば、「まず人質を解放してくれ。それに全力を集中してほしい」というわけで、(これは)無理もないことです。

 ところが、彼がやったことはイスラエル社会の分断を強めることで、人質救出のプロセスの進行中、第1段階を終わらせる前(すなわち第2段階に移行する前)に再び戦闘を開始したということです。これとセットになっているのが何かというと、この(2025年)3月に彼はバハラブミアラ検事総長を解任したり、国内諜報庁シンベトのバー長官らを解任したりしていることです。

 これは、首相あるいは首相の集団における収賄(汚職)容疑を捜査していた法務の担当者、あるいは国内諜報機関の捜査に対して彼が牽制するためです。こうしたものとセットになっているのがガザ作戦の延長ということです。

 いってしまえば、首相は自分の政治生命の延命を優先するあまり、ガザ作戦を永続化させ、そして、トランプ大統領を常にイスラエル政治に巻き込もうという考えから、人質の最終的な釈放よりもハマスの殲滅を優先しようと決断したかのように思われます。


●ガザの悲劇…ネタニヤフ首相からもハマスからも捨て駒扱いされて


 折から、米国のトランプ大統領によるいわゆる相互関税の発表に際して、真っ先に反応してワシントンを訪ねた各国首脳の一人はネタニヤフ・イスラエル首相であったことは、偶然ではないと思われます。彼はトランプ氏がいうところのイスラエルの関税障壁撤去を約束しました。いわば、その約束と引き換えに彼はガザにおける自分の政策に対する支援を求めたことになります。

 こういうと(言葉が悪いですが、彼は)ガザ住民をあたかも将棋でいえば死に駒のように、チェスでいえば使い捨てのポーン(歩)のようにしています。死に駒のよ...

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