●「中年の危機」に際して考えるべきこと
問題は、自分の意欲をどうやってキープするかという話と、やってこなかった学び直しをどうするかということです。それらに対するカギが、実は「中年の危機」というところにあります。
前回お話ししたように、40代前半でシチュエーションが交差します。そのあたりで誰もが思うのが、スライドに書いてある「自分とは何者か?」「人生100年の折り返し地点に来た…」という自覚です。また、「自分の人生を作るのは会社か、自分か?」という疑問や「自分は社会に生かされているのかも…」という思いもあります。一生懸命自分でやってきたつもりだけれども、大きな目で見ると、実は社会の中の一員であって、社会とともにあるということを考えなければいけないのではないか、ということです。
さらに、「そんな社会とどう向き合っていくのか?」。社会は現在、危機的状況ですが、それに対して自分はどうコミットしていくのか。そうしたことが、もやもやしてくるのが40代前半だということでもあります。これを「中年の危機」といいます。日本だけではなく、欧米でも「ミドルライフクライシス」といわれることがあります。
交差したところで「もう終わったかな」と思う人は、実は「中年の危機」をスルーする人です。少しは悩んでいるけれども、忙しいし、遊びも大事だというので、自分で深く受け止めずにスルーしてしまう。そのままずっと、それまでのパターンが続いていってしまう。だから学び直しにも踏み出さないし、自分のキャリアや将来の自分ということも考えない。せっかく会社任せの人生への疑問を感じたのに、答えを出さないまま、そのままいってしまう。
しかし、ここは、「終身知創」に切り替えることで「キャリア自律」の意識を高められるかどうかがポイントです。ですので、人生100年のライフシフトを考えるにあたっては、40代の方は中年の危機に早晩遭遇するか、あるいはその渦中にあるかもしれません。そのようなときに、「自分にとってのキャリアとは何か」「自分にとってのライフシフトとは何か」を考えてほしいし、皆さんの部下の方でそのあたりの年代の方がいらっしゃったら、キャリアについて考えるための投げかけをしてみていただければと思います。「学び直しをするなら、今がチャンスだ」ということを、ぜひプッシュしてほしいと思います。
●自分を中心に考える「人生の成長戦略」
ということで、これからの人生では、「キャリア自律」を考えていかないといけませんが、このことを経営学のコンセプトを使うなら、競争戦略と成長戦略がある中で「人生の成長戦略」といえるだろうと私は思います。
競争戦略とは、目の前の勝負にいかに勝つか、あるいは今年度の売り上げやテーマなどの目標を達成するかということです。それに対して、成長戦略とは、未来のビジョンに向かって、今何を準備するかということです。今年結果が出なくても、5年後、10年後に結果を出すために、今からやっておかないといけないのは、まさに学び直しそのものだろうと思います。
学びとは、瞬間的なスキルアップだけではなく、もっと将来のことを考えて自分の用意をしておくということです。これを人生に当てはめると、日々会社の中で忙しく、組織に言われたことをやり、昇進するために頑張ってスキルを磨くのも大事だが、それで100パーセントの時間を費やしていいのかということです。
いかに人生の成長戦略として、自分の未来のために今、何を仕込むかということを考えてもらうのが非常に重要になっているということで、これが「終身知創」につながっていくと思います。
●未来を作る「Will・Can・Create」へ
このところでの一つのメッセージとして、ぜひ皆さんに覚えてほしいことが一つあります。
これまでは「Will・Can・Must」といわれてきました。「Must」が先にあるので、会社が「これをやってほしい」ということはやらなければいけない。だから、そのためにスキルを磨くし、自分もそれがやりたいというように、自分の目標として書き入れる。そのように、会社ありき、仕事ありきのやり方でした。
それはそれで重要です。自分が会社から期待されていることに対して合わせていくというのは、自分の精神衛生上もいいわけです。しかし、より長い人生を考えると、会社中心で会社任せにつながってしまうというリスクがあるのです。
ですので、皆さんに覚えてほしいのは「Will・Can・Create」です。 まず「Will」は、自分が好きなことは何か。「Can」は、自分が得意なことは何か。その結果、自分は何をやりたいかの「Create」を意識し...