キケロ『老年について』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
キケロは覚悟がいい…終幕でジタバタしない「死」への構え
キケロ『老年について』を読む(9)死について老年はどう対処すべきか
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
生きていく上で「捨て身でいる」「死を覚悟する」のは、人生のいろいろな時代を通じて人間の強さ、権威にもつながることだと本村氏は言う。そのためには若いうちから「死の練習」をすることが大事である。「生に執着しない」ということは、歳をとればますます大事になる。その意味でも最期に潔く亡くなったキケロは覚悟がいい。今回は『老年について』の最終話にふさわしく、「死」への構えについて解説する。(全9話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分28秒
収録日:2023年6月12日
追加日:2024年3月2日
≪全文≫

●若いうちから「死の練習」をすることが大事


―― 続いて第4の理由は「死について老年はどう対処すべきか」というテーマになります。いくつか読みます。

 「死というものは、もし魂をすっかり消滅させるものならば無視してよいし、魂が永遠にあり続ける所へと導いてくれるものならば、待ち望みさえすべきだ」

 「何しろ終わりが来れば過ぎたものは流れ去ってしまうのだから。ただ徳と善き行いによって達成したことだけが残る。時間も日も月も年も過ぎて往く。そして往時は還らず、後来は知る由もない。人は皆、生きるべく与えられただけの時に満足しなければならぬ。

 たとえば、役者が人に喜ばれるためには、どこか出ている幕で喝采を浴びさえすれば出ずっぱりになる必要はないように、賢者も『皆さん、拍手を願います』にまで至らなくてもよい。束の間の人生も善く生き気高く生きるためには十分に長いのだ」

 なかなか格好いい言葉を書き連ねていますが、ローマ人たちの死生観は、どういうものだったのでしょう。

本村 一概には言えませんが、キリスト教ではない時代ですから、ここにもあるように「死後は何もなくなってしまう」と考えていた人もたくさんいました。また「死後は別の世界があるかもしれない」と考えている人もいました。

 ここでカトーが言っているのは、「死後は何もないなら、そこでおしまいでいいじゃないか。もし別の世界があるなら、それに備えるのもいいのではないか」と。考え方によってどちらでもいいから心配することではない、といった内容です。

―― しかも出ずっぱりじゃなくていい。いい役者のように一幕喝采を浴びれば、それでいいじゃないかという考え方ですね。

 さらに「老年だからこそ気概をもって生きられる」という面白い事例を挙げています。

 「老年には定まった期限がなくて、義務の奉仕を果たし続け、しかも死を軽んじることができる限り、立派に生きていけるのだ。そこから、老年の方が青年以上に気概に満ち、毅然としているということが起こる。

 僭主ペイシストラトスに対するソローンの返答がそのあたりの消息を伝えている。即ち、〈一体何を頼んでそんなに大胆に逆らうのか〉と問われて、ソローンは〈老年を〉と答えたというのだ」

 老年なのだ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
デカルトの存在論に学ぶ(1) 「我思う、ゆえに我在り」
「我思う、ゆえに我在り」はデカルトの専売特許ではない
津崎良典
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
與那覇潤
現代の小児科学と最高の子育て(1)現代の小児科学の役割
困難の克服と幸せな人生の獲得、それが小児科学の目的
高橋孝雄
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(35)鶴見太郎先生の公開収録を振り返る
【10min紹介】鶴見太郎先生の公開収録を振り返る・・・お寄せいただいた声
テンミニッツ・アカデミー編集部
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(4)認知症と共生社会の実現に向けた対策
その物忘れ、認知症かも…加齢による物忘れとの違いと一番大事なこと
小川純人
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
核DNAデータで日本人のルーツを探る…アフリカから日本まで来た行程と時期は?
斎藤成也
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ