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バラバラ事件!? 検査項目をバラバラに見てはいけない

健診結果から考える健康管理・新5カ条(2)健診結果はダルマ落としでアプローチ

野口緑
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
概要・テキスト
血管障害は突然起こるものではなく、長年のわずかな異常の積み重ねによって引き起こされる。健診結果の数値をバラバラに捉えることを避け、毎年の進行具合を段階的に理解して、その変化を根本的な要因からアプローチすることが病気予防の鍵となる。健診結果の見方として「ダルマ落とし」と名づけられた方法について解説する。(全7話中第2話)
時間:11:40
収録日:2025/01/10
追加日:2025/04/22
キーワード:
≪全文≫

●検査結果の「バラバラ事件」を起こしてはいけない


 「血管をより長く守る時代の健康管理の考え方」5カ条のうち、第1条は「検査項目をバラバラに見てはいけない」ということになります。

 先ほどのA判定、B判定、各検査項目ごとに、この項目はC判定だったけれど、この項目はA判定だから大丈夫という見方、これを私はいつも「バラバラ事件」と呼ぶのですけれど、バラバラに見ていては本質がつかめなくなるのです。そして、将来何が起こってくるかということが分からなくなってくるということになります。


●わずかな異常の蓄積と肥満が大きなファクターになる


 というのも、血管障害はこの(スライドの)ように進んでいくということになるからです。これは、実際に倒れられた方々のデータということになります。Aさんは54歳で脳梗塞です。Bさんは57歳で心筋梗塞になられた方です。

 Aさんをご覧いただきますと、横軸に年齢があります。54歳で倒れたのですが、そこから遡って、10年前ぐらいからこの検査結果が少しずつ基準を超えているものが増えていっているというのが分かっていただけるのではないかと思います。中性脂肪が上がったり、血圧が上がったり、尿酸が上がったり、そしてコレステロールに変化があったり、ということが分かるわけです。

 では、Aさんは脳梗塞に至るまでに1つ1つの項目が先ほどのC判定やD判定、あるいはE判定のような極めて悪かったのかというと、中性脂肪も血圧も尿酸も、決してそんなに極めて悪い値ではなかったのです。B判定、ものによってはC判定のものもあったわけですけれど、つまりわずかに基準値を超えているか、あるいは正常でも極めて高値という値で10年間、ずっとそのままの状態で継続してしまった、そういう状態を引っ張ってしまったというのがAさんです。

 その結果として、52歳のときに脳の血管が一時的に詰まってしまうのです。例えば、食事をしているとなんとなく手に力が入らなくなってお箸をポトッと落としてしまったり、とかです。あるいは、口元がどうも締まりにくくなって、何だかおかしいなというような状態になって、あわてて病院に行くという状態です。

 そこでお薬が処方されます。脳の血液の流れを良くすると、一般的によくいわれるお薬を出されるのですが...
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