●日本の医療がテロ攻撃に歯が立たない三つの理由
健康医療安全保障の5回目。今回は安全保障にかかる医療の側の問題点について、お話をさせていただきます。
皆様方の中には日本の医療の水準は大変高いから、万が一いろいろなものが使われても、とりあえず病院に運び込みさえすればなんとかなるのではないかと高をくくっている方がいるのではないかと思いますが、実はなんとかならないのです。
日本の医療は、安全保障にかかるいろいろな健康被害の役には立たない。歯が立たないのには大きく三つの理由があります。
一つ目は、テロの中に含まれている悪意というものに対して、日本の医療はあまりにも無防備、無抵抗であるという点です。二つ目は、日本の医療はカビが生えたような教科書の知識しか持っていない。最新のテロに使われるような化学や微生物の知識を持ち合わせていないということ。そして三つ目は、安全保障にかかるようないろいろな健康被害に対して対応できるような医療体制になっていないという点です。
この三つの点について一つずつ、少し詳しくお話をさせていただこうと思います。
●テロの悪意に無防備な日本の医療と救急医療チーム「DMAT」の問題点
まず、テロの中に内在する悪意に対して日本の医療があまりにも無防備、無抵抗であることについてです。
東京には「東京DMAT」という、大きな事故や事件が発生した際にいち早く現場に駆けつける救急医、救急看護師で形成された、1200人規模の医療チームがあります。(彼らは)救命センターから消防とともに現場に駆けつけるわけです。年間400例ほどの実績があり、万が一の場合、例えば都内で爆弾テロが起こっても、おそらく10分以内に彼らは現場に駆けつけて、いろいろな医療行為をすぐさま始められると思います。
しかし実際には、これが問題です。現在、世界各国で起こっている爆弾テロは、原則必ず2発、ときに3発起こります。1発目の爆発で被害者が出た(場合)、これの救助・救出、あるいは医療対応に当たるために人がワーッと寄ってきた、そのタイミングで2発目が爆発されることになります。
おそらく、先ほどご紹介した東京DMATの隊員は、まさにこの2発目の格好の餌食になってしまうのではないかということが危惧されるわけです。なぜなら東京DMATのチームは、こうしたテロについての基本的な知識というものを熟知...