「進化」と聞くと、つい「進歩する」「物事が良くなる」ようなイメージを抱いてしまう。だが、生物学の考えでは、それは「違う」のだという。「生物進化」のあり方と「思想としての進化」が、実はまったく別々になってしまっているのである。では、「生物から考える進化」とは、本当はどのようなものなのだろうか。第1話では、まず、ダーウィン時代に考えられていた“transmutation”としての「進化」を踏まえたうえで、古代ギリシアからの生物についての諸々の議論を紹介しつつ、解説していく。(2025年5月15日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全9話中第1話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
「進化」への誤解…本当は何か?
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
2.タイトル未定
2026年1月6日配信予定
3.タイトル未定
2026年1月12日配信予定
5.タイトル未定
2026年1月19日配信予定
6.タイトル未定
2026年1月20日配信予定
7.タイトル未定
2026年1月26日配信予定
8.タイトル未定
2026年1月26日配信予定
9.タイトル未定
2026年1月27日配信予定
時間:0秒
収録日:2025年5月17日
追加日:2025年1月5日
収録日:2025年5月17日
追加日:2025年1月5日
≪全文≫
●生物の進化は進歩思想とは関係がない
―― 皆さま、おはようございます。
(会場の声) おはようございます。
―― 本日もどうぞよろしくお願いいたします。
実は今回の講義でございますけれど、2024年も長谷川先生にはこちらの同じ場所にご登壇をいただきまして、お話をいただきました。前回は「ヒトの性差とジェンダー論」というテーマで講義を行いました。ヒトの性差というものと、ジェンダーですね、社会的な意味があるジェンダーというものがどう関連するのかというような形のお話をいただいたのですが、その中で実は「進化」についてたいへん興味深いお話を先生がしてくださっており、それがどういう話かというのはぜひ(テンミニッツ・アカデミーでの配信講義を)見てのお楽しみではあるのです。
そのことをきっかけに今回は、そもそも進化とはどういうものなのかというところでお話をいただこうと思った次第です。実は私もそうだったのですが、「進化というと、何か物事が良くなることだ」と思っておられる方はどのぐらいいらっしゃいますか。
(会場で多数の挙手があった反応を見て)……先生、こういうことです。
(会場の声) (笑)
―― 私も進化というのはてっきり良くなることかと思っていたのですが、先ほど挙げた「ヒトの性差とジェンダー論」という講義の中で、「実は違うのです」というお話がありました。特に生物学的に見たら違うのですというお話があり、そこがたいへん興味深いお話だったので、今日はそこを深掘りするということで、ぜひ講義を進めてまいりたいと思います。長谷川先生、どうぞよろしくお願いいたします。
長谷川 どうもありがとうございます。
長谷川です。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、自然人類学という――文化人類(学)ではない――ヒトという動物がどのように進化してきたかということを考える自然人類学の出身です。
私は人類学の立場なのだけれど、ずっと化石とか遺伝子とか、そういうことにはあまり興味がなかったのです。人間がどういうふうに行動するか、動物も含めて、生態、環境がこうなときにどういう行動をするかという、その行動の研究をしたかったので、あまり化石とか遺伝子とか、主流の人類学(の研究)はやってきませんでした。でも人類学なので、そういうことは知らければいけないから、一応全部分かってはおります。
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●生物の進化は進歩思想とは関係がない
―― 皆さま、おはようございます。
(会場の声) おはようございます。
―― 本日もどうぞよろしくお願いいたします。
実は今回の講義でございますけれど、2024年も長谷川先生にはこちらの同じ場所にご登壇をいただきまして、お話をいただきました。前回は「ヒトの性差とジェンダー論」というテーマで講義を行いました。ヒトの性差というものと、ジェンダーですね、社会的な意味があるジェンダーというものがどう関連するのかというような形のお話をいただいたのですが、その中で実は「進化」についてたいへん興味深いお話を先生がしてくださっており、それがどういう話かというのはぜひ(テンミニッツ・アカデミーでの配信講義を)見てのお楽しみではあるのです。
そのことをきっかけに今回は、そもそも進化とはどういうものなのかというところでお話をいただこうと思った次第です。実は私もそうだったのですが、「進化というと、何か物事が良くなることだ」と思っておられる方はどのぐらいいらっしゃいますか。
(会場で多数の挙手があった反応を見て)……先生、こういうことです。
(会場の声) (笑)
―― 私も進化というのはてっきり良くなることかと思っていたのですが、先ほど挙げた「ヒトの性差とジェンダー論」という講義の中で、「実は違うのです」というお話がありました。特に生物学的に見たら違うのですというお話があり、そこがたいへん興味深いお話だったので、今日はそこを深掘りするということで、ぜひ講義を進めてまいりたいと思います。長谷川先生、どうぞよろしくお願いいたします。
長谷川 どうもありがとうございます。
長谷川です。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、自然人類学という――文化人類(学)ではない――ヒトという動物がどのように進化してきたかということを考える自然人類学の出身です。
私は人類学の立場なのだけれど、ずっと化石とか遺伝子とか、そういうことにはあまり興味がなかったのです。人間がどういうふうに行動するか、動物も含めて、生態、環境がこうなときにどういう行動をするかという、その行動の研究をしたかったので、あまり化石とか遺伝子とか、主流の人類学(の研究)はやってきませんでした。でも人類学なので、そういうことは知らければいけないから、一応全部分かってはおります。
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