ダーウィンの進化論以降、生物の進化に関する議論はどのように発展してきているのか。重要な議論として、木村資生(国立遺伝学研究所名誉教授)の中立説がある。生物の生存と繁殖に必ずしも関連しない、分子レベルでの変異を計算科学で探究した木村理論の画期性を解説する。(2025年5月15日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全9話中第6話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●変異をシミュレーションした木村資生の中立説
長谷川 ダーウィン以後にすごく重要な変化がいくつかあるのですけれど、ダーウィン以後で私が最も重要だと思うのは、木村資生先生(編注:国立遺伝学研究所名誉教授)の中立説です。
まずは、ダーウィン以後の一番(の変化)は遺伝子というものが分かって、DNAの螺旋構造が分かったということだと思います。
けれど、その次に進化の理論としてすごく重要なのは、木村先生が先ほどの4つをやると、変異がたくさんあり、変異の中には生存と繁殖に有利なものや不利なものもあるということが前提で、変異はあるけれど生存と繁殖に有利でも不利でもない変異もあるだろう、(つまり)生存と繁殖に関係ない変異があるだろうということで、それはどういう運命をたどるでしょうかということを、計算科学、(つまり)計算することによっていろいろやったことです。
(生存と繁殖に)関係ないのだから、それがうまく伝わるか伝わらないかは偶然であり確率です。なので、サイコロを振るのと同じで、消えるか、増えるか、同じかの3方向しかないわけです。それをずっとやっていくと、どこかで全部なくなってしまうというか、全員が持つようになるというか、そういう極端なことが起こるでしょうということで、それがみんな確率で起こるとしたら、何万年に何個とかと計算できるのではないかということを中立説として確立しました。
だから、ほとんど生存と繁殖に関係ない変異は、分子レベルでの、(つまり)体の中の奥にある分子のレベルでの変異です。目の色とかそういう外の表現型にはあまり上がってこないけれど、私たちの遺伝子にはたくさんの変異があるのです。その分子レベルでの変異では中立であるということはたいへん重要で、その運命がどうなるかということを確率で計算してやると、分子時計ができるのです。
直接生存や繁殖に関係のないところの遺伝子で、いくつの遺伝子が違うと何万年前に別の道を歩み始めたかが計算できる。(しかし、)そのことが、淘汰がかかっていると、(つまり)うまく生き延びる・生き延びない、繁殖できる・繁殖できないに関係があると、(生存や繁殖が)できないものはさっとなくなり、できるものはさっと広がってしまうので、その速度は速いのです。でも...