進化の理論を科学的に突き詰めようとしたダーウィン。その背景には、昆虫少年だった幼少期と若くして世界をめぐり生物の多様性を目の当たりにした経験があった。ダーウィンの生い立ちと生涯から、その探究の源泉を探る。(2025年5月15日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全9話中第5話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●「多様性」から出発したダーウィンの研究
長谷川 ところが、(まだ)遺伝というものが分かっていないのです。遺伝子の発見(編注:遺伝物質がDNAであると証明されたこと)が1944年です。それでDNAの構造解析が1953年でしょう。だから、あと100年たたないと遺伝の仕組みの詳細は分からないのです。
それでメンデルがいて、メンデルの法則の発見がダーウィンと同時代です。しかもメンデルは自分の論文(メンデルの法則の論文)をダーウィンに送っているのです。けれど、ダーウィンは、そのページを切っていないということは読んでいない。送ったのに読んでいないのです。読んでおけばよかったのにと思うのだけれど、読んでいないので、遺伝がどう起こるかにはまったく分からなかったわけです。彼は、自分の遺伝理論をパンゲネシスの理論などを通じて考えたのだけれど、全て時間の無駄だったわけです。
だから、遺伝はどうなるか分からないのだけれど、遺伝するということは分かります。それは――(彼は)一生懸命いろいろなことをやったけれど――多様性から出発したことがすごく大事だということです。
(皆さん、)イギリスにいらしてみたことがございますか。本当に貧弱な生態系の土地ですよね。森林はあるけれど、モミの木などです。ロビン・フッドがいたようなところですが、いるのはシカなどで、寒いし、雨が降るし、あとは牧場になっている(というようなところです)。(スライドにある)こういう熱帯降雨林のようなところを生まれて初めてイギリス育ちの子が見たら、「世の中はこんなものだったのだ」と驚くと思います。
日本はそこまで貧弱な生態系ではないですが、日本から熱帯降雨林(の地域の生態系)を見ると、それでも感激します。でも、その比ではないと思うのです。
●思考の原点にあった若き日のダーウィンの探索
長谷川 ダーウィンは昆虫少年だったので、いろいろと甲虫を集めていました。(例えば)カブトムシを集めていたのですが、珍しいものがいたので捕まえる。もっと珍しいものがいたので捕まえる。(さらに)もっと珍しいものが3匹目にいたので、どうしようと思って、(今度は)口の中に1個入れて捕ろうとしたら、口の中でピヤッとものすごい刺激臭のあるものを出された。なので、大慌てでペッペッとやったら、3匹とも全部逃げてしまったと...