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ハラスメントを助長する全体主義、無関心、属人思考、圧力…

ハラスメント防止に向けた風土づくり(2)ハラスメントと心理的安全性の関係性

青島未佳
一般社団法人チーム力開発研究所 理事
概要・テキスト
ハラスメントを助長している組織風土には、全体主義、無関心風土、属人思考風土、圧力的雰囲気があり、これらの根底にあるのは「心理的安全性の欠如」だと青島氏は語る。心理的安全性はコミュニケーションの基盤となるものだが、では「心理的安全性が高いチーム」と「心理的安全性がないチーム」ではどのような違いがあるのか。今回は、ハラスメントを助長している組織風土として、全体主義の弊害についてハンナ・アーレントの『エルサレムのアイヒマン』を例に解説しながら、ハラスメントと心理的安全性の関係性を掘り下げていく。(全5話中第2話)
時間:12:22
収録日:2023/02/03
追加日:2023/08/20
≪全文≫

●ハラスメントを助長している組織風土と心理的安全性の欠如


 では、この改善の中でハラスメントを助長する企業文化にはどんなものがあるのだろうということを、今日は簡単にご紹介したいと思います。

 私の考えでは、ハラスメントを助長している組織風土には、「全体主義」「無関心風土」「属人思考風土」「圧力的雰囲気」、それから「心理的安全性の欠如」があります。こういうところがハラスメントを助長している組織風土ではないかと思います。

 では、最初の「全体主義」についてです。全体主義は個人の利益よりも組織や、その共同体の持っている利益を優先しましょうという考え方です。これは、哲学者のハンナ・アーレントが『全体主義の起源』という書籍を出されたことで非常に有名になってきた概念かと思います。

 全体主義の概念の悪さを説明するにあたって何がいいかと思っていましたが、やはりハンナ・アーレントが分析しているアイヒマンですね。彼がなぜホロコーストのような残忍な事件の責任者になってしまい、ああいう事件を起こしたのかを分析したのがハンナ・アーレントです。『エルサレムのアイヒマン』という本があり、そこでは、アイヒマンはあのような残忍な事件を起こしているので(彼は)いかに極悪でいかなる悪人だったのだろうかということが検証されています。

 しかし、裁判を傍聴したハンナ・アーレントからすると、アイヒマンは一般的なサラリーマンの中でも気の弱いようなタイプの人であり、ごくごく普通の人でした。そういう人間が、こうした非常に残忍な事件の首謀者ではなく責任者となっているというところに、一つのポイントがあると。

 書籍にも書いていますが、どんなに普通の人間であっても、または善意を持った人だとしても、こうした権威への服従が起こってしまうと。そんなところが人間の弱さではないかと考えられていて、そのように権威への服従をさせてしまうのが、全体主義の悪さです。

 本人の善意や思想に関係なく、全体主義においては共同体が持つ思想に侵されていってしまう。どんなにいい思想や普通の考えを持っていた人間でも、悪の思想に侵されてしまう。そうした観点から、全体主義というものは、ハラスメントを助長しやすい文化にある根底といいますか、一つの要因になっていると考えられるかと思っています。...
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