●ハラスメントの定義と多様な種類
あらためて一般社団法人チーム力開発研究所の青島です。今日は心理的安全性の知見を踏まえて、ハラスメント防止に向けた風土づくりについてお話しさしあげたいと思っています。
今日の概要ですが、「ハラスメントとは何か」という点と、「ハラスメントと心理的安全性の関係性」や「心理的安全性がない職場でハラスメントが起きてしまった事例」。それを踏まえて、「リーダーはどのように行動していくべきか」というあたりを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。
ではあらためて、ハラスメントの種類と定義について確認をしていきましょう。
「ハラスメント」という言葉は、皆さん聞いたことがあると思いますが、ハラスメントとは、相手に身体的、精神的、性的に害をもたらす嫌がらせやいじめのことを指します。
ここに書かれているように、ハラスメントの種類は今、いろいろと増えてきています。代表的な例といえば、パワハラ(パワー・ハラスメント)、セクハラ(セクシャル・ハラスメント)。また、従来のマタハラ(マタニティー・ハラスメント=女性の妊娠、出産、育児についてのハラスメント)にパタハラ(パタニティ・ハラスメント=男性の育児休暇についてのハラスメント)が加わりましたし、ケアハラ(ケア・ハラスメント=家族の介護についてのハラスメント)、ジェンダー・ハラスメント、カスタマー・ハラスメントのようなところが今では付け加わってきています。
このようなハラスメントの中でも、近年最も注目され、問題になっているのは、やはりパワー・ハラスメントではないかと思っています。
●「パワハラ防止法」~その変更点と企業の対応~
厚生労働省の調査などを拝見していても、近年では労基署(労働基準監督署)に向けられる相談件数が増えているというところもありますが、そうした観点の中で、大半のところをパワハラが占めているという現状もあります。そうしたことも踏まえ、今日は、こういったハラスメントを阻害する、あるいは助長するような組織風土がどのようなものかといったところもお伝えしながら、進めていきたいと思います。
そこで1点お伝えしますと、2020年6月に「パワハラ防止法」が施行されています。これにより、各企業は具体的な対策を求められることになります。また、2年後の2022年4月には、中小企業にも防止措置が義務化されています。これらの背景には対人関係、とりわけ職場の人間関係における不和などが挙げられているように思っております。
この防止法案について、変更点を簡単にご説明しますと、基本的には「(職場における)ハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業者側で義務化された」というところです。
具体的に義務化といった観点では、パワハラに対する方針の明確化およびその防止の徹底、これを周知・啓発する活動、苦情や相談に対して適切に対応するための体制整備、また仮に起きてしまったときには迅速な対応、そして相談者や行為者のプライバシー保護、という部分を組織の中できちんと整備していくことが求められています。
このような防止策を講じない企業に対しては、企業名を公表していこうという方針も掲げられています。
●増え続けるハラスメントの背景にあるもの
では、簡単にデータを紹介したいと思います。先ほど申し上げたように、(職場での)いじめや嫌がらせの件数は、近年、非常に増加傾向にあると考えられます。
ここで挙げたのは相談件数なので、決してこれが実際のハラスメントの件数だとはいえませんが、このような増加(傾向)にあることは間違いありません。また、近年「ハラスメント」という言葉や考え方が定着してきているので、多分それに伴って相談件数も増えているのかという考察はできます。しかし、基本的には依然として8万7000件あまり(9万件弱)の相談件数があるというのが実態なのだろうと思います。
近年の例として令和2年度の調査結果で、「ハラスメントはどの程度、各企業で起きているのか」というところを見ていただきましょう。
パワハラでは、48.2パーセントが「過去3年間に相談があった」と回答していて、実に2社に1社がハラスメント関連の事案の相談があるとされています。先ほど申し上げたように、これは相談なので、実際の件数はもっと多いのではないかとも考えられます。
こうしたことは社会課題としても非常に大きくなっています。では、なぜ...