●流動的な労働市場に適しているのはジョブ型雇用
―― 冒頭にいろいろご質問を皆さんからいただきましたけれど、この講義をお聞きいただいて、改めてご意見、ご質問をお受けしたいと思っています。
【質問1】日本もメンバーシップ雇用からジョブ型に転換するといわれますが、これはどの程度、雇用の流動性に効果があるのでしょうか。もう1つ、スウェーデンでは、たしか雇用保険から来るのかもしれませんが、辞めた人、クビになった人を保護することが前提になっていて、それがために雇用の流動性が非常に高いといわれています。この2つについての先生のご意見をうかがいたいです。
宮本 ご質問ありがとうございます。まずジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用についてですが、馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんので、簡単に説明します。
最近、日本的雇用は「メンバーシップ型雇用」、海外の一般的な雇用は「ジョブ型雇用」と呼ばれています。この違いを分かりやすく説明すると、椅子取りゲームのようなものをイメージするとよいでしょう。
日本のメンバーシップ型雇用では、企業が「タグ(職種)の付いていない椅子」を用意し、そこに労働者が入る形になります。タグがついていないため、いろいろな仕事を体験することができます。例えば、最初は人事部に配属され、次は営業部に異動する、というように業務内容が固定されていないのが、メンバーシップ型雇用と呼ばれるものです。
一方、ジョブ型雇用では、最初から椅子にタグが付いているのです。「この仕事は人事課の仕事です。あなたは人事課以外では働きません。お給料はいくらです」というように、明確に決まっています。
あるとき、労働者が「キャリアアップしたい」と思ったら、違う椅子を探しに行くのです。その際には、営業というタグが付いていて、お給料も高くなるかもしれません。これが、海外で一般的なジョブ型雇用の仕組みです。
では、流動的な労働市場にはどちらが適しているのか。答えはジョブ型雇用です。ですから、本格的に日本の労働市場を流動化させようとするなら、ジョブ型雇用をもっと普及させていくという話になります。
しかし、現在、日本の企業の多くはメンバーシップ型雇用です。そのため、一気にジョブ型に移行するのは現実的ではなく、一定の移行期間が必要になります。そこで、企業内の労働市場を活...