労働市場を流動化させることが急務である日本だが、企業や個人はどのように対応していくべきなのだろうか。労働者の生産性に応じた給与システムの導入、スキルアップによる能力向上が求められる中、政策としては非常に重要なのは「長寿雇用戦略」である。日本の高齢者は就業意欲が高く、そこにまだまだ伸びしろがあるからだ。そのためにも「健全な危機感」を持った上で労働市場改革を進めていく、今まさにその時期に来ている。(全7話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
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●生産性に応じた給与システムの導入を
―― それで、次に流動的な労働市場で求められるものというところですね。
宮本 労働市場が流動的になると、それに合わせて変えていくべき点がいくつかあります。
まず、企業側が変えなければならない点があります。それは人材マネジメントのやり方です。具体的には給料体系です。従来の年功序列型のものでは、流動的な労働市場には適応できません。
では、どうすればいいのか。かつてよくいわれた「成果主義」ではありませんが、労働者の生産性に応じて適切な評価を行い、その評価に見合った給与を支払うというシステムに変えていく必要があります。これが流動的な労働市場では求められます。
これは従来の考え方とは大きく異なります。先ほど、年輩の方になると評価されないという話をしましたけれど、そうではありません。年輩の方も評価するのです。評価して、良ければちゃんと高いお給料を支払うという形にしましょう、ということです。
能力のある方に高いお給料を払っても、企業は何の損もしません。むしろそういった方にはいてほしいわけです。年齢や性別は関係ないのです。優秀であれば、若い方でも年配の人でも高い給料を支払う。そうでなければ、それなりの評価となる。こうした仕組みに変えていくことが、流動的な労働市場で求められる改革なのです。
●自らでスキルアップをしていく必要性
宮本 もう1つ重要なのは労働者の視点です。労働者自身がスキルアップをしなくてはいけないのです。
労働市場が流動的になると、新しいチャンスが増えます。より良い企業に転職したい、別の業界に挑戦したいと思ったときに、選択肢が広がるのです。しかし、何もせずにチャンスをつかめるわけではありません。やはり、スキルアップが不可欠になります。ということで、流動的な労働市場では個人がスキルアップをする、自己啓発をしましょうという話になるわけです。
これまで日本では人的投資をする主体は企業でした。企業が労働者に対して研修やセミナーを提供することで、スキル向上を支援してきたのです。ところが、労働市場が流動的になってきますと、企業側がトレーニングを提供するのではなく、労働者が自らスキルアップに取り組む必要がでてきます。つまり、皆さんのように、まさに自己投資が必...