半世紀ほど前、松下幸之助に経営者の条件について尋ねた田口氏は、「運と徳」、そして「人間の把握」と「宇宙の理法」という命題を受けた。その後50年間、その本質を東洋思想の観点から探究し続けてきた。その中で後藤新平の思想に触れ、「宇宙・人生は倫理的実在」と理解する。そして、成功とは自然律との調和であり、無心・無私の姿勢がその核心にあることを悟ったという。今回はその壮大な経営の真理について学んでいく。(全6話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
徳と仏教の人生論
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
哲学と生き方
2.正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
2025年10月25日配信予定
3.タイトル未定
2025年10月31日配信予定
4.タイトル未定
2025年11月1日配信予定
4.タイトル未定
2025年11月1日配信予定
5.タイトル未定
2025年11月7日配信予定
6.タイトル未定
2025年11月8日配信予定
時間:12分12秒
収録日:2025年5月21日
追加日:2025年10月24日
収録日:2025年5月21日
追加日:2025年10月24日
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≪全文≫
●運と徳と経営、人間の把握と宇宙の理法――50年間悩み続けた命題
田口 私が30代の半ばで松下幸之助さんに会ったときに、2つの質問を、同時にしたわけではないのですが、その間があったのでしました。
1つは、「経営者の条件は何ですか」と。経営者としての条件です。それを松下さんは、「運が強いこと」と言いました。私は予期しない答えだったので、「どうやったら運は強くなるのですか」と聞いたら、「徳を積むことだ」と言われたわけです。したがって、経営というものを考えるときに、運と徳というものを考えざるを得なくなってくるのです。
何かそこには普遍性があるのではないかと思えば、生きるということはどういうことですかと聞いても、同じことを彼は言ったのではないかと思います。それを推察すればするほど、私がいただいたこの言葉は、簡単にいえば、松下さんは解答を私に示したと思ったかもしれないけれど、私は大いなる命題をいただいたようなわけですね。
── 命題ですね。
田口 つまり、運と徳と経営ということです。今は運と徳と人生といってもいいです。人生の要諦としてこういうものがあると。
しばらくして、2、3年たってからですけれど、またお目にかかったときに、「経営とは何かをひと言で言ってください」と聞いたところ、要するに、ひと言ではいえないと。「ふた言じゃだめか」と言いました。そのふた言ですが、「人間の把握」と「宇宙の理法」と言われたわけです。
「人間の把握」のほうは、分かったようなものですけれど、これも最近、この10年ぐらい前から、人間の把握という、なぜこのような分かりきったことを松下さんが言ったのかというところが、またすごい命題であり、これもよく考えてみたのです。
── なるほど。
田口 それから「宇宙の理法」のほうは、一歩も先へ進まないというぐらいに難解な言葉であったということで、省略していうと、30代から――今、私は80代ですから――50年近くこの命題で苦しんだということです。それでこの命題が、最近、この5年ぐらい前に解けたのです。
── それはすごい話ですね、50年間の命題が解けたというのは。
田口 解けたのです。それが解けたら、何か全てが解けたような気がしたのです。それで、逆に、何が分かったかというと、いろんな命題を私は預かってきたのだということがよく分かったのです。
いろんな人が...
●運と徳と経営、人間の把握と宇宙の理法――50年間悩み続けた命題
田口 私が30代の半ばで松下幸之助さんに会ったときに、2つの質問を、同時にしたわけではないのですが、その間があったのでしました。
1つは、「経営者の条件は何ですか」と。経営者としての条件です。それを松下さんは、「運が強いこと」と言いました。私は予期しない答えだったので、「どうやったら運は強くなるのですか」と聞いたら、「徳を積むことだ」と言われたわけです。したがって、経営というものを考えるときに、運と徳というものを考えざるを得なくなってくるのです。
何かそこには普遍性があるのではないかと思えば、生きるということはどういうことですかと聞いても、同じことを彼は言ったのではないかと思います。それを推察すればするほど、私がいただいたこの言葉は、簡単にいえば、松下さんは解答を私に示したと思ったかもしれないけれど、私は大いなる命題をいただいたようなわけですね。
── 命題ですね。
田口 つまり、運と徳と経営ということです。今は運と徳と人生といってもいいです。人生の要諦としてこういうものがあると。
しばらくして、2、3年たってからですけれど、またお目にかかったときに、「経営とは何かをひと言で言ってください」と聞いたところ、要するに、ひと言ではいえないと。「ふた言じゃだめか」と言いました。そのふた言ですが、「人間の把握」と「宇宙の理法」と言われたわけです。
「人間の把握」のほうは、分かったようなものですけれど、これも最近、この10年ぐらい前から、人間の把握という、なぜこのような分かりきったことを松下さんが言ったのかというところが、またすごい命題であり、これもよく考えてみたのです。
── なるほど。
田口 それから「宇宙の理法」のほうは、一歩も先へ進まないというぐらいに難解な言葉であったということで、省略していうと、30代から――今、私は80代ですから――50年近くこの命題で苦しんだということです。それでこの命題が、最近、この5年ぐらい前に解けたのです。
── それはすごい話ですね、50年間の命題が解けたというのは。
田口 解けたのです。それが解けたら、何か全てが解けたような気がしたのです。それで、逆に、何が分かったかというと、いろんな命題を私は預かってきたのだということがよく分かったのです。
いろんな人が...