徳と仏教の人生論
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横井小楠が説く「世界の幸せのお世話係」こそ日本の使命
徳と仏教の人生論(4)克己と天壌無窮
西郷隆盛が悟った「克己」、『日本書紀』に出てくる「天壌無窮」、これらの重要性をはじめ、東洋思想における欲望と肉体の関係については、まさに宇宙との対話につながる論理である。また、儒・仏・道・禅・神道の5つの東洋思想は同じ真理を示しており、宇宙との対話や全人格的思惟を通して、日本が果たすべき役割は「宇宙の代弁者」として世界の幸せに貢献することである。すなわち横井小楠の言葉「世界の民の幸せのお世話係」になることこそ日本の使命であると田口氏は説く。(全6話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
時間:12分12秒
収録日:2025年5月21日
追加日:2025年11月1日
≪全文≫

●天命を果たせるように肉体を持たせた


── 西郷隆盛はあの4年間、ほとんど島の中で『言志四録』の選り抜きを自分でつくりながら過ごしましたが、その中で、もともと欲のない無私の人でしたけれど、あのとき何か悟ったわけですね。

田口 これは、西郷南洲が言っていることだけれど、「克己」と言っているわけです。己に克つということ。『南洲遺訓』などは、最初から最後まで言っていることは何かというと、克己です。「自分を愛することはよからぬことなり」と言っているわけです。

 では、なぜ克己ということがすごく重要なのか。これは、天も宇宙も非常に考えたところだなと私は思えるのは、自分の分身として地球上に小宇宙を派遣するというようになれば、その地球上での生活が営める、もっといえば天命を果たせるようにつくってやらなければいけないとなれば、やはり肉体を持たせなければいけないということになるわけです。

 そして、肉体というものを保持するためには、どうしても欲望が必要です。俗にいう五欲、食欲とか睡眠欲などですが、それらは全部、肉体を保持するために必要なことなのです。そういう意味で、欲望というものは非常に危険なものである、良くないものであるというのはその通りなのですが、その前提には、肉体の保持のためにそれはなければいけないもので、必然なのです。

 この肉体の保持を乗り越えていくためにはどうしたらいいかというときに、先ほどの全人格的思惟とか、それから私が申し上げた、10年かかるある種の修行のようなものが必要なのです。そうすると、肉体も保持されながら乗り越えられる。乗り越えるというのは捨てることではなく、それを一時停止できるわけです。

── すごいですね、一時停止ですね。

田口 肉体を一時停止できるのです。

── しかし、五欲がないと肉体は保持できないのですね。

田口 保持できないのです。そもそも、食欲がなければ途端にだめですから。財産欲も性欲も、全部なければ保持できないのです。

── 保持できないですね。

田口 ですから、とても大切なものだから否定しない。道家も儒家も否定していません。そして、否定していないからこそ厄介なのです。しかし、仏教はそこを若干持ち扱ってしまったところがあるのです。ですから、禁欲ということになってしまった。それで、禁欲といいながらも、という但し書きのものがいく...

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