徳と仏教の人生論
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正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
『書経』を研究する中で発見した真理について理解を深めていく今回。徳は天をも感動させる力を持ち、真の和合は神を動かす。そして、宇宙は人間のように、また人間も宇宙のように構成されており、その根底には「正直」がある。正直は天や宇宙との信頼関係を築く根幹であり、日常生活の中で最も大切にすべきものなのだ。これは人生にも通じる普遍的な規範だという。(全6話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
時間:12分54秒
収録日:2025年5月21日
追加日:2025年10月25日
≪全文≫

●和合の至りは神をも感動させる


田口 もっといえば、いったい宇宙とはいかなるものかということを知りたくなってくるではないですか。したがって、ここで儒家の思想の根本である『書経』という書物があるのですけれど、『書経』を徹底的に研鑽した結果、巷間伝わっている言葉に、「満は損を招き、謙は益を受く」があります。ですから、満ち足りた存在になると、失うものがあると。自ら謙虚にしてへりくだるものは益を受けると。そういう有名な漢籍の言葉があるのです。そして、「これすなわち天道なり」といっているわけです。

 ところが、その前後にすごいことが書いてあることを、私は迂闊ながら気がつかなかった。それは、今まで言ってきたような、鍵が開いた上で読んでいるから、気づくことがものすごく多くなってきたということではないかと思うのです。何と書いてあるかというと、「徳、天を動かす」、つまり、徳というものが天を感動させる、そのことこそ徳なのだというのです。徳は、天が感動するものなのだ、と書いてあるのです。

―― なるほど。

田口 最後には何と書いてあるかというと、「至諴、神を感ぜしむ」と書いてあるのです。この至諴の「諴」という字は、言偏に、感じるの「感」の下に心がないものです。これは例えば封書のとじ目につける、糸偏に咸を書いて「緘」という文字があります。封じ込めるということですが、簡単にいうと、これは和合の至りなのです。

―― 和合の至りですね。

田口 つまり、人間と人間が和合して、それこそ肝胆相照らして、「そうだ、一緒にやろう。君とはもう無二の親友になった」ということとか、それからスポーツであれば、全軍一体になって「なんとしてもこのピンチを脱するんだ」とか、野球でいえば、「最後の1点を取るんだ」といって、球場のファンまでも全部一体化するというのが和合の至りです。そして、和合の至りは神をも感動させるのです。

―― なるほど。神をも感動させるのですね。

田口 それで、もう完全にドアが開きました。つまり、神とか天というものは、ある種、人間のようなものだと思っていいということです。感動するということです。

―― 感動するのですね。

田口 感動するものなのです。だから、先ほどの話と通ずるところなのです。やはり感動というものが政治を良くする。感動する政治でなければいけない。つまり、国民が「それ...

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