なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』の著者・今井むつみ氏が認知科学の観点から解き明かす今シリーズ。まずは人間の認知がいかに有限であるかを「スキーマ」をキーワードに解説する。(全3話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV・アカデミー編集長)
何回説明しても伝わらない問題と認知科学
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
今井むつみ(一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事/慶應義塾大学名誉教授)
2.『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
2025年11月9日配信予定
3.知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
2025年11月16日配信予定
時間:10分29秒
収録日:2025年5月12日
追加日:2025年11月2日
収録日:2025年5月12日
追加日:2025年11月2日
≪全文≫
●「何回説明しても伝わらない」のはスキーマの問題!?
―― 皆さま、こんにちは。今回は今井むつみ先生に『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』(日経BP)というご本についてお話を伺ってまいりたいと思います。今井先生、どうぞよろしくお願いいたします。
今井 皆さま、こんにちは。今井むつみです。よろしくお願いいたします。
―― よろしくお願いいたします。
『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』ということで、こういうコミュニケーションの本は世の中にたくさんこれまでもございます。また、いろいろなパターンの本があるかと思うのですけれど、私がこの本を読ませていただいて非常に感じたのが、まさに認知の部分です。人間がどう認知しているのか。その認知にどのようなバイアスがあるのかということを中心に、いろいろな心理学的実験の結果とか、科学的な成果を非常に盛り込んでいただいていますので、なぜ伝わらないということが起きるのかが非常に、ある意味では具体的にかつ客観的に分かるような気がしました。
先生、この本をおまとめになる心、思いというのはどういうところにございましたか。
今井 この本、実はあまり自分で専門的に研究して論文を書いてきた分野ではなくて、むしろ、私は言葉の研究をしているので、言葉に関すること、コミュニケーションには興味は持っていたのです。でも、「この本はコミュニケーションの本か」と言われると、なにか少し違和感を持つ読者の方もいらっしゃるのかなと思います。
―― そうですか。
今井 そうでもないですかね。
―― 読んでいる中ではコミュニケーションの奥といいますか、その原因となる部分を非常に教えていただいている感じがしました。
今井 そうですね。コミュニケーションの奥の話をしていて、私は(2025年3月まで)慶應義塾大学でずっと「認知心理学」という一般教養の授業を教えてきたのです。その認知心理学は非常に幅広い分野で、例えば人がどう考えるか(ということについて)言葉を使うというのは、そもそもその背後にその人の考えというものがあるわけです。考えがなければ、それこそただの言葉発生器です。今、ChatGPTという生成AIはそれに似たところがあるのかもしれないですけれど、人は...
●「何回説明しても伝わらない」のはスキーマの問題!?
―― 皆さま、こんにちは。今回は今井むつみ先生に『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』(日経BP)というご本についてお話を伺ってまいりたいと思います。今井先生、どうぞよろしくお願いいたします。
今井 皆さま、こんにちは。今井むつみです。よろしくお願いいたします。
―― よろしくお願いいたします。
『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』ということで、こういうコミュニケーションの本は世の中にたくさんこれまでもございます。また、いろいろなパターンの本があるかと思うのですけれど、私がこの本を読ませていただいて非常に感じたのが、まさに認知の部分です。人間がどう認知しているのか。その認知にどのようなバイアスがあるのかということを中心に、いろいろな心理学的実験の結果とか、科学的な成果を非常に盛り込んでいただいていますので、なぜ伝わらないということが起きるのかが非常に、ある意味では具体的にかつ客観的に分かるような気がしました。
先生、この本をおまとめになる心、思いというのはどういうところにございましたか。
今井 この本、実はあまり自分で専門的に研究して論文を書いてきた分野ではなくて、むしろ、私は言葉の研究をしているので、言葉に関すること、コミュニケーションには興味は持っていたのです。でも、「この本はコミュニケーションの本か」と言われると、なにか少し違和感を持つ読者の方もいらっしゃるのかなと思います。
―― そうですか。
今井 そうでもないですかね。
―― 読んでいる中ではコミュニケーションの奥といいますか、その原因となる部分を非常に教えていただいている感じがしました。
今井 そうですね。コミュニケーションの奥の話をしていて、私は(2025年3月まで)慶應義塾大学でずっと「認知心理学」という一般教養の授業を教えてきたのです。その認知心理学は非常に幅広い分野で、例えば人がどう考えるか(ということについて)言葉を使うというのは、そもそもその背後にその人の考えというものがあるわけです。考えがなければ、それこそただの言葉発生器です。今、ChatGPTという生成AIはそれに似たところがあるのかもしれないですけれど、人は...
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