「アカデメイア」から考える学びの意義
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「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
哲学と生き方
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
混迷を極める現代社会にあって、「学び」の意義はどこにあるのだろうか。次世代にどのような望みをわれわれが与えることができるのか。社会全体の運営を、いかに正しい知識と方針で進めていけるのか。一人ひとりの人生において学びがいかに大きな支えになりうるのか。学問の原点である古代ギリシアでプラトンが創設した学園アカデメイアから考える今シリーズ。まずは現代の学問が置かれている状況を、反知性主義や経済原理の浸透といった点から整理する。(全4話中第1話)
時間:11分04秒
収録日:2025年6月19日
追加日:2025年8月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●反知性主義…「学問への反発や不信」がなぜ巻き起こるのか?


 皆さん、こんにちは。テンミニッツ・アカデミーにようこそ。今日はその「アカデミー」という言葉の元となった学問の原点「アカデメイア」というものについてお話ししていきます。

 アカデメイアというのは、プラトンが古代ギリシアで紀元前4世紀に創った学校の名前ですが、その話に入る前に、まず現代の学問や学びを取り巻く状況について少し考えてみたいと思います。

 私も大学やさまざまな場で研究や教育に携わっている中で、最近特にその状況や変化に懸念あるいは危機感を抱くようになっています。あまり良くない傾向が起こっているのではないかという危惧です。3つ大きな懸念点があります。

 1つは、学問に対する反発や不信、2つ目は政治が学問に介入してくる、あるいは抑圧するということです。3つ目は、経済原理というものが非常に浸透し、支配しているという点です。この3つについて簡単に考えていきたいと思います。

 まず、学問や学びというものに対する反発や不信という点ですが、皆さん、昨今のニュースでさまざまにご存知のように、例えばアメリカ合衆国だと大統領、トランプ氏が大学や知識人に対して大きな圧力をかけているという望ましくない状況が生じています。

 これは決して一つの国の問題でなく、世界各国で似た状況が起こっています。私が懸念しているのは、そんな中で、大学や学問に携わっている人、学生が困ったという声を上げているときに、社会のサポートがあまり得られていない、むしろアメリカという国も含めて、多くの人々はそのような圧力に対して賛成の意を示しているという点です。

 これは非常に不思議で、かつ驚くべきことではありますけれど、現在では、例えば「反知性主義」、(つまり)知性に反対する態度などと呼ばれていて、広く社会で流布している傾向だといわれています。それは、大学だとか、学問だとか、あるいは知識人だとか、そういったものに対する感情的な反発、ないしは強くいえば憎悪というもので、それがそのような形に現れているということのようです。

 その中には、エリートという人たちに対する反発、つまり経済格差の問題だとか、あるいは社会権力構造ということもあるようですが、それも含...

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