●神々の物語の中でもっともシリアスで悲劇的な北欧神話
―― 皆さま、こんにちは。
鎌田 こんにちは。
―― 本日は鎌田東二先生に、北欧神話についてお話を伺いたいと思います。先生、どうぞよろしくお願いいたします。
鎌田 よろしくお願いします。
―― 北欧神話ということですが、これはどの辺りの神話と考えればいいのでしょうか。
鎌田 北欧神話はデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、アイスランドといったバルト海周辺から大西洋のほうに広がっている地域での神話です。ゲルマン神話と類縁性を持っているので、ゲルマン神話のスカンジナビア的バージョンといってもいいかと思います。
北欧神話の大きな特徴は――これは私の主観なので、比較神話学や神話学的に正しいかどうかは分からないのですが、私の受けとめの中では――もっとも悲観的、ニヒリスティックな神話世界です。
―― 神話にも数々の悲劇的な神話がありますけれども、中でも頭抜けて悲劇的ということになるわけですね。
鎌田 私が知る限り、北欧神話が一番深刻です。救いがないというのか、閉ざされてしまうというのか。人類史が考えた、人類あるいは神々の物語の中で、もっとも悲壮美、悲劇性を持っているのが北欧神話です。
そういった意味では北欧神話は、ギリシア神話が1つの明るい地中海的な能天気の神話の極=南極であったとするならば、北極の一番深刻でシリアスの極みのような、そういった世界です。終末論や神々の黄昏、世界の破局、人類の破局を予言しているといったようなものが北欧神話です。
●北欧神話は陰陽神話――創造神話として生々しく肉感的に表現
―― あらすじは、どういうものになるのですか。
鎌田 あらすじも本当は、古いものなのかどうなのかということもよく分からないのです。日本の『古事記』や『日本書紀』よりも新しい成立といわれています。10世紀以降、13世紀頃にかけて(日本では『平家物語』ができてくる時代)、『エッダ』というものがまとめられてきました。その『エッダ』という物語集、神話集の中に、さまざまな神々の物語が描かれています。
『エッダ』にも2種類あり、その中に、神々の戦いの世界があります。2つに分かれて戦う、あるいは三つ巴になって戦う。また、2つの勢力の敵と味方が組み合わさって味方になり、もう1つの敵...