日本語と英語で味わう『源氏物語』
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平安時代から続く伝統…『源氏物語』の最大の特色は口承性
日本語と英語で味わう『源氏物語』(2)『源氏物語』が描いたリアリティ
時代を越えて読み継がれる『源氏物語』の魅力は、人間のリアリティがとことん描かれていることにある。愛読者だったという藤原道長はもちろん、白河上皇や本居宣長といった、その後の歴史的人物にも愛され、いろいろと論じられてきた『源氏物語』だが、今回はその中で描かれている人間のリアリティ、その奥深さに迫る。(2024年2月18日開催「大人の学びフェス」講演〈「源氏物語」の深い魅力〉より、全5話中第2話)
時間:14分08秒
収録日:2024年2月18日
追加日:2024年10月21日
≪全文≫

●『源氏物語』を誰が最初に読んだのか


キャンベル 最近(思うのは)、紫式部の『源氏物語』は、たいへん長編でもありますし、長い時間をかけて書いたに違いないと。最初におっしゃったように、曖昧模糊とした彼女の日常の行状がどういったものかということは、『紫式部日記』というもの自体が文学的な営為だということもあり、先ほど申し上げたような同時代の日記や史料からいろいろな推定をしながら、『源氏物語』はどうして書かれたのか、誰にそれを(書いたのか)と。18~19世紀以降、特にロマン主義というものがヨーロッパのドイツやイギリスで登場すると、天才として作者というものが現れて、そこに読者がいなくてもおのずから自分の才能を発露するための詩や作品をつくる、あるいは作曲をするということがあるのです。けれど、11世紀の日本にはそういう概念も実体が当然ないわけで、最初に読んだ人は誰なのかということが最近、研究者たちの間で問題といいますか、注目されています。

 やはり藤原道長のために書かれたとか、最初に読んだのはそう(道長)に違いないとか、いろいろな人が誰が最初に(読んだのかについて話題にしています)。だって鎌倉時代より前に、『源氏物語』は実際に書かれたものが存在しないわけです。鎌倉時代に書かれた写本というものが、私たちが行きつく最古のものとしての『源氏物語』です。

 そういうことがあって、ユネスコの世界遺産には登録しにくいともいわれたりしているのです。原稿が残っていないということですね。どうなのでしょう。佐藤信彦先生がおっしゃった、その絶妙な文章を誰が最初に(読んだのでしょうか)。

林 『紫式部日記』を見ると、たしかに道長が『源氏物語』の愛読者であったことは間違いないのです。紫式部が留守の間に彼女の部屋に入っていって、そこにあった原稿を持っていってしまったりしているわけなのです。

キャンベル ひどいですね。

林 それで紫式部は、「ああ、あれはいろいろあとから書き直して、推敲した原稿だったのに」ということを言ったりしているわけです。だから今、われわれが見る『源氏物語』のどのレベルの話であるのかがよく分からないのですけれど、当時の宮廷の彰子中宮を中心とする貴族社会の中では、『源氏物語』はよく知られていて、道長に限らずみんなが楽しみにしていたと見るのがいちばん正しいと思います。

キャン...

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