日本語と英語で味わう『源氏物語』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「胡蝶」の中の玉鬘…その文章の綴り方の妙は古今独歩
日本語と英語で味わう『源氏物語』(3)親子の物語と自然の描写
『源氏物語』は光源氏の色恋物語であると同時に親子の物語でもある。そして、そこには重要なテーマが二つあるという。一つは、光源氏にとっての「正妻」とは何かということ。もう一つは、この物語を彩っている、写実的で情感豊かな自然の描写である。その特色がよく出ている「胡蝶」の一節を実際に朗読しながら、『源氏物語』の筆致を味わう。(2024年2月18日開催「大人の学びフェス」講演〈「源氏物語」の深い魅力〉より、全5話中第3話)
時間:19分14秒
収録日:2024年2月18日
追加日:2024年10月28日
≪全文≫

●光源氏にとっての正妻が『源氏物語』の大きなテーマの一つ


林 『源氏物語』というと、光源氏の恋愛遍歴というものが中心になっているものであると、あまり読んだことのない人は思っているでしょう。でも、そういう色恋物語というのと同時に、これは親子の物語でもあるのです。

 この時代は自由恋愛というものはなくて、誰が誰と結婚するかというのは、1つの家の存続、繁栄、没落を占うための重要な要素だから、そういう意味で、恋といっても、われわれが「蝶よ花よ」と喜んでいるようなものではないのです。そういう中で、葵の上は源氏の正妻だったけれど、紫の上はとうとう最後まで正妻にはなれないわけです。

キャンベル 子どもは育てるけれど。

林 はい。子どもを育てるけれど、正妻にはなれない。それでようやく、葵の上は死んでしまったし、そのあとがずっと実質的な正妻ですよね、紫の上は。それでもう源氏も功成り名を遂げて中年にはなったことだし、もう安泰かなと思っているところへ女三宮という人が、また天皇の朱雀院の帝のご命令で降嫁してくる。そうすると、源氏は嫌々、これを正妻にせざるを得ないということになります。

 ところが、これが不義密通をして薫という子どもを産んでしまう。というように、結局の話が、源氏にとっての正妻とはいったい何だったのだということがすごく大きなテーマになっているのです。


●『源氏物語』を支える自然の描写


林 実際には、宇治十帖のことはべつに置いておいて、源氏が若い頃からずっといろいろな女君を相手に恋愛をしていく、その様相を眺めてみると、実はそこにいろいろな要素が込められていることが分かります。

 例えば、先ほどいったように、男女関係が生ずると、そこに子どもが生まれるということを前提として、その子どもがどうなるかということです。

 例えば、明石の君が産んだ明石の姫君という、源氏にとっての唯一の女の子を産んだということが、非常に大きな意味を当時は持っていたわけです。つまり、男の子は源氏の息子だったら源氏にしかなれないわけなのです。

キャンベル 階段にならないのですね。

林 ええ。それ以上にはなれないわけです。だけれど、女の子だったら東宮などの帝に入内させることによって、将来は皇后になるわけです。ということは、女の子を持っていれば皇后の父親になれるわけだから、これは非常に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎

人気の講義ランキングTOP10
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(4)克己と天壌無窮
横井小楠が説く「世界の幸せのお世話係」こそ日本の使命
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(5)社会的共通資本によるプラチナ社会へ
「日本に来れば未来が見える」…希望があるうちにやろう!
小宮山宏
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(6)裁判の帰趨
死刑を前にしたソクラテスの最後の言葉
納富信留