福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
宮本武蔵「我事に於て後悔せず」の真意と小林秀雄の自然観
福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福(7)日本人の「自然観」
浜崎洋介(文芸批評家/ 京都大学経営管理大学院特定准教授)
歴史や自然につながっていない人格は崩壊する。そう論じた福田恆存の人間論は、小林秀雄の自然観と軌を一にする。禅宗の修行や宮本武蔵の思想を参照しながら日本人が依拠すべき自然観を論じる小林の議論を追い、福田との共通点を探る。(全8話中第7話)
時間:12分28秒
収録日:2024年5月10日
追加日:2024年7月28日
≪全文≫

●福田恆存の自然論と小林秀雄の「砧木(だいぎ)の幹」


 ということで、続きのほうに入っていきたいと思います。

 先ほど、福田恆存の思想の全体像を自然への信仰という形でまとめましたが、実はこの自然への信仰、また同じところに戻ってきたことに、皆さん、お気付きだと思います。今回の講義の前にテンミニッツTVでつくった講義(「小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える」)の小林秀雄と吉本隆明の2人のキーコンセプトも「自然」でした。そこにもう1回、私たちは戻ってくることになったわけです。復習込みでまとめておきましょう。

 福田恆存はこう言っていたわけです。つまり、集団的自我、99匹には還元できない、個人的自我の1匹へとまず遡行しました。遡行した上で、1匹が1匹だけでは支えられないがゆえに、それを支える全体性の問題、そして、そこにある自然の問題へと彼は目を移していった。そして、結論的にこう言ったわけです。つまり、過去の歴史や大自然につながっていない人格は崩壊する。現代の人間に最も欠けているのはその明確な意識ではないかと、まさに批評の中で語りかけることになります。

 そして、面白いのは、これと同じようなことをしたのが、実は小林秀雄だったということです。小林秀雄は、もちろん福田恆存とは違う言葉でそれを言っていました。彼は「砧木(だいぎ)の幹」ということを非常に強調することになりました。砧木の幹とは何か。それはまさに、前近代にあった日本人にある感性の根本です。その根本から水と養分を吸い上げていって、近代以降に接ぎ木をした、ある近代的な制度、あるいは西洋的な価値観、これにエネルギーを渡さなかったら、私たちは個人などというものを立ち上げることさえできないではないか。つまり、砧木の幹、日本の歴史に近代を接ぎ木すること、それこそが、私たちに、私に与えられた直感に素直に従うことをもたらすのだ。つまり、後ろから押してくる力です。それをもたらすのだといって、彼の価値観の根幹に据えたわけです。

 晩年、小林秀雄の担当編集者の郡司勝義という人がいるのですが、この人に言った言葉が面白いのです。「僕の弟子も福田君で終わりだな」と言ったらしいのです。つまり、それぐらい福田恆存を信頼していたのです。その信頼していた福田恆存と小林秀雄が、まさにこの直感と自然の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫